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- 石原 麻美
- 横浜市立大学大学院医学研究科眼科
書誌事項
- タイトル別名
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- サルコイドーシスの新しい診断基準と診療ガイドラインをめぐって
説明
霧視や視力低下などの眼症状は自覚しやすいため、眼科受診が契機となりサルコイドーシスの診断がつくことが最も多い。診断においては類上皮細胞肉芽腫を組織学的に証明することが基本であるが、眼内組織の生検は行わないことから、サルコイドーシスを強く疑わせるぶどう膜炎があっても、組織診断が得られない。また、肺やリンパ節の生検を望まない患者も多く、まずは、「サルコイドーシス診断基準」に則って全身検査をするわけであるが、新たな診断基準では全身反応を示す検査項目に「血清可溶性IL-2 受容体(s IL-2R)上昇」が加わった。血清 s IL-2R はサルコイドーシスの他、悪性リンパ腫や結核、膠原病、固形腫瘍などでも上昇することが知られている。眼科でサルコイドーシスと鑑別を要する疾患には、結核性ぶどう膜炎、ヘルペス性ぶどう膜炎、ベーチェット病、HTLV-1 関連ぶどう膜炎、ポスナー・シュロスマン症候群などの既知の原因のぶどう膜炎と、ぶどう膜炎と誤診されることの多い眼内悪性リンパ腫がある。我々は、ぶどう膜炎を有するサルコイドーシス患者において、血清 s IL-2R 測定が他の原因によるぶどう膜炎および眼内悪性リンパ腫から、サルコイドーシスを鑑別することができるのか否かを検討した。血清 s IL-2R の感度(72%)は血清 ACE より高く、特異度(91%)も高いことから、眼病変からサルコイドーシスを診断する際には、血清 s IL-2R は有用な血清マーカーであると考えられた。眼内悪性リンパ腫症例は BHL を呈さず、ACE 上昇もみられないため、これらの検査項目を組み合わせることで、サルコイドーシスとの鑑別は可能であると考えられた。診療ガイドラインについては、眼炎症学会の 5 人のメンバーで作成を進めている。サルコイドーシス眼病変の治療の基本は点眼治療(ステロイド点眼、散瞳剤点眼)であり、前眼部の炎症に加え、軽度の硝子体病変や眼底病変であれば点眼のみで経過をみる。一方、視機能障害をきたす重篤な病変がみられる場合や、局所治療で効果が不十分な場合には、経口ステロイド剤の投与を考慮する。懸濁ステロイド剤の後部テノン嚢下注射は、経口ステロイド剤投与とならび有効な治療法である。経口ステロイド剤の効果が十分に得られない場合は、他の薬物による治療や硝子体手術を考慮する。以上、ガイドライン案の詳細に関してご紹介する。
収録刊行物
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- The Japanese Journal of Sarcoidosis and Other Granulomatous Disorders
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The Japanese Journal of Sarcoidosis and Other Granulomatous Disorders 35 (Suppl1), 32-32, 2015
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205323034496
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- NII論文ID
- 130005144485
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- ISSN
- 18846114
- 18831273
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可