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- 内田 雅克
- 東北芸術工科大学
書誌事項
- タイトル別名
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- The Revival of Military Masculinity Presented by Boys' Magazines:
- 少年雑誌が見せた「軍人的男性性」の復活 : 占領下のマスキュリニティーズ
- ショウネン ザッシ ガ ミセタ 「 グンジンテキ ダンセイセイ 」 ノ フッカツ : センリョウ カ ノ マスキュリニティーズ
- Masculinities Under the Occupation of the Allied Forces
- ─占領下のマスキュリニティーズ─
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抄録
アジア・太平洋戦争期、『少年倶楽部』はジェンダー・イデオロギー生産装置として機能し、軍人を男のモデルとして「男らしさ」を連呼し、「少年」をウィークネス・フォビアの包囲網に囲み、そして戦場に送り続けた。やがて敗戦とともに、『少年倶楽部』は、その薄い冊子に平和と希望を語り始めた。だが、その厚さと同様、戦前のあの勢いは全く見られなかった。<BR>少年には希望や平和・反戦が語られるなか、戦前に野球を愛した男たちは早くも動き出し、GHQの後押しを受けながら次々と野球の復活を実現した。GHQの軍人、日系アメリカ人、プロ野球や学生野球を導く男たちには、それぞれの野球に対する思いがあった。そして野球復活のプロセスのなかで、精神野球のイデオローグ飛田穂洲を中心に、野球少年の美しさ、純情、さらに国家の再建を彼らに託す声が聞こえ始めた。<BR>やがて少年向けの野球雑誌が誕生し、飛田をはじめ野球に「少年」が学ぶべき「男らしさ」を見出す男たちは、戦い・団結・仇討の精神を、そしてそこに映る至極の少年美を語った。再開した高校野球の球児は、かつて夭折へと導かれた少年兵とその姿を重ねた。少年雑誌が見せたのは、「軍人的男性性」の復活といえよう。戦闘的な「男らしさ」は、一見平和を象徴する野球というスポーツを媒体とし、『野球少年』のような少年雑誌のなかで再びその姿を見せ始めたのだった。<BR>もちろん、少年雑誌が見せた復古的なマスキュリニティがかつてのヘゲモニックな地位に返り咲いた訳ではない。ジェンダーの境界線が揺さぶられ、決定的な男性モデルが喪失した占領下という時代は、複数のマスキュリニティーズの出現を可能にしていた。歴史的文脈において、それらを読み解いてゆくのが本研究のテーマであり、本稿はその第一章である。
収録刊行物
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- ジェンダー史学
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ジェンダー史学 8 (0), 75-84, 2012
ジェンダー史学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205336882560
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- NII論文ID
- 130004555374
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- NII書誌ID
- AA12120628
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- ISSN
- 18849385
- 18804357
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- NDL書誌ID
- 024094725
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可