女性音楽家協会とW.W. コベット

書誌事項

タイトル別名
  • The Society of Women Musicians and W.W. Cobbett:
  • 女性音楽家協会とW.W.コベット : アマチュアとジェンダーの関係からみる20世紀初頭イギリス音楽界の一断面
  • ジョセイ オンガクカ キョウカイ ト W.W.コベット : アマチュア ト ジェンダー ノ カンケイ カラ ミル 20セイキ ショトウ イギリス オンガクカイ ノ イチ ダンメン
  • ──アマチュアとジェンダーの関係からみる20世紀初頭イギリス音楽界の一断面──
  • Amateurism and Gender in Early 20th Century British Music Circles

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抄録

本稿は、女性音楽家の相互協力を主目的として1911年に設立されたイギリスの女性音楽家協会(The Society of Women Musicians)と、その男性準会員であり、イギリス室内楽の振興に努めたアマチュア音楽家W.W.コベット(Walter Willson Cobbett, 1847-1937)との協働を中心とする関わりを、アマチュアとジェンダーの関係を軸に考察するものである。<BR> 18世紀以降、音楽家がプロとしての社会的地位を獲得するにつれ、アマチュアの音楽は中流上層階級の女性の嗜みとみなされるようになった。アマチュアが女性及び女性性と結びつけられ、プロに劣るとされる中で、女性音楽家協会ではアマチュアとプロが区別なく活動しつつ、会員のプロ意識と社会的認知の高揚が図られた。一方コベットはプロの音楽界に関わりつつ、アマチュアの視点を主張し続けた。両者が協働した室内楽というジャンルは、比較的ジェンダー中立的でアマチュアとプロとの交流の機会が多い。協働による二つの事業、すなわちイギリス室内楽の楽譜ライブラリーと四重奏の演奏コンテストは、アマチュアや一般音楽愛好家を主眼としながら、プロの音楽家にとっても有意義なものであった。<BR> パトロンとしてのコベットが特定の音楽家ではなく無名のアマチュアを含む諸組織に目を向けたことは、女性音楽家に対する支援にがった。また、コベットと同協会の個々の会員との協働は、女性の活動への注目を通じて、大作曲家作品に集中しがちな男性・プロ中心の音楽界に視野の拡大を促した。一方、女性音楽家協会は男性に対して終始開かれた姿勢をとった。とくに作曲への関心は同協会、コベット及び男性・プロ中心の音楽界を結ぶ接点となった。女性音楽家協会とコベットとの関わりは、アマチュアと女性及び女性性、プロと男性性、という結びつきを相対化し、音楽界をアマチュア、プロ、女性、男性を含む全体として捉える視座を高めたといえよう。

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