Fスケールによるパーソナリテイの研究II

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抄録

1. この研究の目的は, 「社会的-文化的要因および個人的-経験的要因が日本人の権威的性格の形成にいかに影響を与えている」かをしらべ, アメリカ人の権威的性格と比較することである.<BR>2. この研究のために, 大学一年次学生について, 日本語版Fスケールにより権威主義的パーソナリティを測定した.<BR>3. 日米両国人の権威的性格の特徴を比較し考察するために, 高得点項目を上位から5項目, 低得点項目を低位から5項目, 次に, 得点の順位差の著しい項目を抽出して, それぞれの内容を検討し, 両者の差異と類似性を明らかにした. アメリカの資料はブルンスイックの原著によった.<BR>4. 両者の項目得点順位の相関係数はr=. 582であった.<BR>5. 上位の5項目の中で共通に選ばれた項目は「意志の力」の項目一つである. この項目から言えることは両者の権威的性格には権威に対する無批判な服従性と 「力と不屈さ」 に対する過信が共通に見られる.<BR>6. 日本の権威主義が投影性, 非科学性, 外罰性, 精神主義によって特徴づけられ, 学習, 労働に対する態度は苦労は当然と思う考え方が強い. アメリカ人の特徴は因襲尊重, 道徳尊重, ステレオタイプ, 仕事に対しては能率主義的, 楽観的な態度がみられる. アメリカ人は強力な指導者の統制を願望し, 日本人は神経質的にこれに反撥している.<BR>7. 権威的性格の背景的要因の研究のために, とりあげた社会-文化的要因の諸変数は親の職業・収入によって測定された社会階級または経済的条件, 出身校地区によって測定された地域性, 両親の存否・両親の年令差・両親の年令・同朋数・出生順位によって測定された家族構造である.<BR>8. 個人的-経験的要因として, 個人の年令, 性別, 入試成績, 専攻の諸変数を用いた.<BR>9. 権威的性格の形成にとって重要な影響を与えた変数は低収入という経済的条件, 特定の職業, 地域性, 両親又は片親の欠如, 母親の年令, 両親の年令差, 同朋数, 長男などの社会的文化的条件であった. これらの諸要因を基盤にして, 専攻, 年令, 性別, 成績などの個人的-経験的要因の影響が加わっていると考えられる. 即ち, 社会-文化的要因の方が個人的-経験的要因より影響が大きく, 基礎的であると考えられる.<BR>10. 出生順位とFスケール得点との間の関係は家父長的家族制度の伝統によってつくられた社会構造, 家族構造によって規定される役割の期待, 価値の強潮の効果のあらわれであると考えられる.<BR>11. 従って, 日本人の権威的性格を二次的社会性格として説明するよりも, 直接に, 社会構造や経済条件によってつくられた一次的社会性格と見なす考え方に立つ方が理解しやすい.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205347736192
  • NII論文ID
    130003720454
  • DOI
    10.11558/jjesp1960.4.65
  • ISSN
    18845436
    0387852X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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