木材の瑕瑾に就て

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タイトル別名
  • Über die Fehler des Holzes

抄録

(1) 一般に木材に現はれる瑕瑾は其類甚だ多く、且其成因、程度の異る場合も尠くないから、從つて是等瑕瑾が材質に及ぼす影響も差異を生じて來るものである。又實際上木を使用するに當りては資材の大小、形状、並に使用する目的の如何に依り著しく瑾瑕を主要視する場合もあり、或程度迄は許容せられる場合もあるが、是れを材質の良否と謂ふ見地より觀れば瑕瑾の存在は整調なる組織を亂す原因として絶對に除去すべき要素である。<br> (2) 外傷によりて生する瑕瑾中入皮は實際上最も普通に起るものであるにも拘らす、疵傷部が比較的少さく、外面的には著しく認められないので、一般に等閑視せられて居る事は甚だ遺憾とする處である。<br> (3) 既に余等が各御料地より蒐集した多數の供試木に就き調査した成績に依れば「入皮」は唯に其の事のみに止らずして、變色、シミ、樹脂條、腐朽、蟲害、等の如き瑕瑾を、之に關聯して二次的に生ぜしめる場合が多く、又不整調なる組織を構成すろ原因ともなるので其の影響の及ぼす所頗る大なるものである。<br> (4) 顯徴鏡的識別の材部要素から考へても「入皮」に俘つて生ずる脂溝及び脂線は正常なる場合と異ることのあるを以つて、之を現在固有の性質と見做し、或は斯る場合を見ずれて本來の性質を決定せんとする場合は、誤りを生ずる虞れがある。<br> (5) 「入皮」に因つて脂線の生ずる場合と生ぜざる場合のあることは、その傷害が生長開始期間内であつたか或は又生長休止期に在つたかと云ふ事に多少關係がある様にも思はれるが、若し何等か關係ありとすれば、生長開始期間中は簡單な刺戟によつても生するであらうと考へられる。<br> (6) 是等の事から考察すれば、實際事業に於て、現存する森林の取扱ひ及び後生林の撫育に當りては、外傷を生ぜざる様注意することは肝要であり、特に生長開始期間中にては容易に外傷を蒙り易い状態に在るから充分注意する必要あり、更に此等の缺點を避けて整調材の生産を計るべきである。

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