Nagarjuna and Satavahana

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  • ナーガールジュナとサータヴァーハナ

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ナーガールジュナの伝記資料は,これまでの研究において,彼の歴史的な事蹟を再構成する資料として,あるいは,その思想を事蹟から裏付ける資料として読まれてきた.そこで問題とされてきたのは,ナーガールジュナの生存年代を決定する,サータヴァーハナ王やカニシカ王との同時代性であり,あるいは『勧誡王頌』『宝行王正論』の著者である事を裏付ける王の師としての事蹟である.これらの記述をもとに,サータヴァーハナ王が誰であるのかという学説が様々な学者によって提示されてきた.しかし,従来の研究は,文献自体の資料的価値を疑問視せずに,ナーガールジュナとサータヴァーハナ王の関係を無条件に歴史的事実の反映と見た事に,根本的な問題があったといえる.ここでは,伝記や聖者伝から歴史的事実を再構成する伝記研究の限界を認識した上で,従来の研究とは異なった,ナーガールジュナ伝の読みを提示したい.七世紀のバーナの『ハルシャチャリタ』は,龍宮を訪問したナーガールジュナが,ヴァースキ龍王から真珠の瓔珞を譲り受け,この宝物を友人のサータヴァーハナ王に贈与したとする物語を説いている。サータヴァーハナは,紀元前一世紀頃から三世紀にかけてデカン地方を統治した王家の名称であるが,インドの説話文学の中には,サータヴァーハナ(あるいはその異称であるハーラ)という名を持つ王がしばしば登場する.ナーガというイメージの連鎖の中で,ナーガールジュナ伝は様々な説話的要素や人物を融合しながら展開していくが,ナーガールジュナとサータヴァーハナ王をめぐる伝説も,デカン地方における説話世界の中に置き直すことで,この展開の一過程として読むことが可能である.

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