The Concept of Diseases and the tri-dosa Theory in the Susrutasamhita

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  • 『スシュルタサンヒター』における疾病概念とトリ・ドーシャ説

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ギリシア医学にルーツを持つ西洋医学では,細胞病理学が発展した16世紀までの長い間,血液の異常を病気の原因とする体液学説が病因論の主流を占めてきた.インド医学に対してもギリシア医学と同じように体液学説が病因論の基盤であるとされ,医学書も基本的にその中核となるtri-dosa説をベースに記述されているとみなされてきた.しかしSusrutasamhita(以下SS)ネパール写本のUttara-tantra(以下Ut)においては現行の刊本と異なりtri-dosa説による疾病の説明が欠落し,またセクション配置にも違いがあることが張本研吾氏によって指摘されている.本稿はSS全体におけるtri-dosa説の位置づけを概観するとともに,Utの構成と疾病概念の関係を考察した.Sutrasthana (Ss)およびNidanasthana (Ns)では疾病の分類に対する下位区分としてtri-dosa説による名称が用いられていた.ある疾病をtri-dosa説のみで説明しようとする箇所はほとんどなく,病因論の根底を担うという扱いではない可能性が想定された.Utは前半(パターンA: 6.1-6.37)と後半(パターンB: 6.39-6.66)とで各セクションの内容構成に差異がみられる.前半においてある疾病の病理と治療法はそれぞれ別々のセクションで記載され,後半ではひとつのセクションの前半で病理,後半で治療法を記載するという形を取る.前半部に収録された眼病の一部にtri-dosa説に基づいた記載がまとまった形で存在するものの,全体を通してはSsやNsと同じように疾病の下位分類名としての位置づけが基本となっていた.Utにおける現行刊本とネパール写本の差異にはSSの医学書としての構成特徴や疾病部位との関連がみられる.眼病の治療法における一部の手技が刊本では独立のセクションとして記載され,鼻カタルを扱うセクションがネパール写本では呼吸器系の疾病のひとつとしての配置,刊本では鼻病の治療法から独立したセクションとしての配置であった.セクション配置に変化が生じた背景には治療法の発達や編集上の意図などが想定される.

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