『ニヤーヤ・リーラーヴァティー』における主宰神論証

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タイトル別名
  • The Proof for the Existence of God in <i>Nyāyalīlāvatī</i>
  • The Proof for the Existence of God in Nyayalilavati

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抄録

<p>古来インドでは主宰神に関する哲学的な議論が盛んに交わされてきた.なかでも,主宰神を奉ずるニヤーヤおよびヴァイシェーシカ学派と,無神論的立場にたつミーマーンサー学派や仏教徒との間で繰り広げられた主宰神の存在論証をめぐる論争は,激しい応酬を重ねることで各々の論理学や認識論に関する諸理論の展開にも大きく寄与する結果となった.本論文は,12世紀頃にヴァッラバが著した『ニヤーヤ・リーラーヴァティー』(= NL)における主宰神論証を分析することで,ウダヤナ以降,ガンゲーシャ以前に展開されたニヤーヤおよびヴァイシェーシカ学派の主宰神論の一端を明らかにする.</p><p>ヴァッラバの提示する論証式は,大地などが結果であることにもとづいて,その作り手としての主宰神の存在を論証するものであり,ニヤーヤおよびヴァイシェーシカ学派による主宰神の存在論証の基本形といえる.そしてNLの主宰神論は,この論証式の妥当性をめぐる論理学的な議論に終始する.全知者性などの主宰神の諸属性についての神学的な議論はなされず,また,ウダヤナが力説した,ヴェーダ作者としての主宰神の存在論証が言及されることもない.</p><p>ヴァッラバによる主宰神論証は,先行するニヤーヤおよびヴァイシェーシカ学派の思想家が扱った論点のなかから,「結果の作り手は身体を具えた者に限定されない」という主張に関わるものだけを集中的に取り上げ,コンパクトに整理したものといえる.また,仏教徒側の文献を読み込み,その内容を元に議論を洗練させた形跡が見られる.既出の論点を扱いながらも,その提示方法や応答の詳細には独自性が見出せ,新ニヤーヤ学派的な論議(vāda)上のテクニックも確認できる.</p>

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