脳の老化と変性におけるDNA損傷修復

  • 笹邊 俊和
    東京医科歯科大学難治疾患研究所神経病理学分野
  • 岡澤 均
    東京医科歯科大学難治疾患研究所神経病理学分野

書誌事項

タイトル別名
  • DNA damage repair in aging and neurodegeneration
  • ノウ ノ ロウカ ト ヘンセイ ニ オケル DNA ソンショウ シュウフク

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抄録

DNA損傷修復機能は他の細胞機能と同様に,老化に伴って低下していくが,変性疾患においてはより早く修復機能の低下が起こっている。私たちはこのことが老化によって変性が進行する分子基盤の1つではないかと考えている。特に,神経細胞は細胞分裂を行わないため,このような修復機能の低下によるDNA損傷の蓄積の影響を受けやすく,様々な神経変性疾患の原因となっている。私たちの研究室では,網羅的プロテオーム解析を用いて,ポリグルタミン病の原因タンパク質によってDNA高次構造調節タンパク質であるHMGB1/2が阻害され,それによりDNA二重鎖切断が増加することを見出した。さらに,インタラクトーム解析から,DNA二重鎖切断修復を担うKu70 と VCP もポリグルタミンタンパク質によって機能阻害されることを報告している。その他にも,毛細血管拡張性運動失調症,眼球運動失行・低アルブミン血症を伴う早期型失調症,色素性乾皮症,コケイン症候群などの神経変性疾患はDNA損傷修復遺伝子の変異によって発症することがわかっている。このように,DNA損傷は様々な神経変性疾患の共通病態であり,その修復を改善することで疾患のみならず老化の制御も可能になるかもしれない。

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