世界標準プラクティスの社内普及過程における障害要因
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- 浅川 和宏
- 慶慮義塾大学大学院経営管理研究科
書誌事項
- タイトル別名
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- Sources of Impediments to the Diffusion of Global Standard Practices within the Firms
- The Cases of Japanese and European Pharmaceutical Firms
- 日欧製薬企業の場合
抄録
本論では,ICHの進展等により製薬業界における国際標準化がますます加速化する中,日欧の製薬企業が新たな世界標準プラクティスを採用し社内に普及,定着させる過程でいかなる困難さが生じ,その背景にいかなる障害要因が介在しているのかを考察した。そこでは「認知的」「政治的」「制度的」障害といった各要因及びSzulanski (1996) が明らかにした「因果曖昧性」, 「吸収・保持能力の欠如」,「関係性の欠如」の各要因が,プラクティスの「採用」「普及」「定着」の各過程における困難さに対していかなる影響を及ぼしているか,に焦点を当てた。日欧企業85社(および日本企業1社内追加調査)に対する実証研究の結果,以下の点が明らかになった。<BR>第1に,あるプラクティスを採用する際に直面する困難さは,そのプラクティスの存在や自社にとっての重要性が十分認識されないことから生じる傾向にある。第2に,自社に取り込んだプラクティスを社内各部署に普及させる際に生ずる困難さの主な要因は,なによりもその対象となるプラクティス自体への反発にある。第3に,一応社内各部署に普及させたプラクティスをそれぞれの部署独自のコンテキストに適合した形で定着させる際に直面する主な障害要因は,なによりもその新たなやり方と自社のこれまでのやり方との間の隔たりに起因する。第4に,そのプラクティスの因果関係が曖昧であったり受け手側にその吸収・保持能力が足りなかったりした場合,それを社内に取り込むことが難しくなる。第5に,受け手の吸収・保持能力が足りない場合,いくらそのプラクティスを社内に普及させようとしても限界がある。第6に,受け手の吸収・保持能力が足りないと,さらにそのプラクティスを社内にしっかりと定着させることが難しい。第7に,日欧比較の観点からは,欧州企業と比べ,日本企業のほうがプラクティスの採用・普及・定着のいずれの段階においてもより困難さを認識している傾向にある。そして第8 に, プラクティスの内容別にみると, GCP 関連プラクティスは,その他のものと比べ,より採用・普及・定着が困難であるとは必ずしもいえないことが判明した。
収録刊行物
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- Iryo To Shakai
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Iryo To Shakai 9 (2), 19-53, 1999
The Health Care Science Institute
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205448773376
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- NII論文ID
- 130004700959
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- ISSN
- 09169202
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可