異体類の生理機能を指標とした宮城県中部沿岸海域の環境モニタリング

  • 角田 出
    Department of Biological Engineering, Senshu University of Ishinomaki

書誌事項

タイトル別名
  • Environmental Bio-monitoring of the Central Coastal Seawater Area in Miyagi Prefecture by Using Physiological Indicators of Flounder
  • イタイルイ ノ セイリ キノウ オ シヒョウ ト シタ ミヤギケン チュウブ エンガン カイイキ ノ カンキョウ モニタリング

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抄録

2005年12月に, 宮城県の石巻東部海域, 松島湾南部周辺海域, 雄勝湾東部周辺海域に生息する (石巻産, 松島産, 雄勝産) マコガレイとアイナメ (石巻産と雄勝産のみ) の生理状態 (指標) を調べると共に, 当該指標から海域の汚染状況を推測した. マコガレイでは, 石巻産と松島産から, 生殖腺の発達不良や血漿のエストラジオール/テストステロン比の高い個体がみつかった. 全海域から, 高い肝臓ミクロソーム内チトクロムP-450 (肝Cyt. P-450) 含量を示す個体が少数捕獲された. 石巻産と松島産では, 雌雄の肝Cyt. P-450含量と脳内アセチルコリンエステラーゼ活性や血漿総チロキシンとの間, 雄の生殖腺指数と肝Cyt. P-450含量の間に, それぞれ, 負の相関関係が認められた. 松島産では, 雌雄の腎臓内免疫担当細胞 (顆粒球) による貪食率が低く, 当該値と肝Cyt. P-450含量の間には負の相関関係がみられた. 石巻産と松島産の雌の顆粒球NBT還元能も低かった. 一方, アイナメでは, 各生理指標に雌雄差や海域差は認められず, 各指標間にも一定の関係はみられなかった. これらの結果は以下の事を示唆する: (1) 海域の内分泌撹乱化学物質汚染を早期に把握するには, マコガレイのような異体類を調査対象とすることが有効.(2) 魚の各種生理指標の個別変化のみでなく, 指標間の相関関係を調べて総合的に判断すると良い.(3) 当該海域における従来の環境改善対策は不十分.(4) 石巻東部や松島湾周辺海域の異体類の一部には, 生体防御活性の低下等の生理障害が出始めている可能性が高い.

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参考文献 (48)*注記

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