顎裂部骨移植術時の移植床作成におけるわれわれの一工夫

書誌事項

タイトル別名
  • Management for Secondary Bone Grafting in to Alveolar Cleft

この論文をさがす

説明

顎裂部へ骨移植をし正常な歯槽形態を得ることが,唇顎口蓋裂の治療の中で重要となってきている。当科では,矯正科と協力して1994年より顎裂部へ腸骨移植を行い,積極的に顎裂形成術を行ってきた。しかし,時として骨移植の移植床作成に際して,鼻腔側の粘骨膜を閉鎖することが困難で,安全で十分な広さの移植床を形成することが難しい症例に遭遇することがある。われわれは,そのようなときに人工真皮を用いて良好な結果を得ている。その方法を紹介し,代表的症例を供覧した。<BR>手術術式:顎裂部の粘骨膜を剥離・翻転して口蓋側,鼻腔側を閉鎖するが,時として鼻腔側を完全に閉鎖することができない症例に遭遇した。そのようなときに,鼻腔側の粘骨膜欠損部分に人工真皮をあてることにより,鼻腔側と交通しない移植床を作成することができた。<BR>結果:術後合併症としては,人工真皮を使用した1例で痩孔を生じ,移植骨の吸収を認めた。これは精神発達遅滞のある症例で術後の安静が保てなかった為と考える。また,人工真皮を使用しなかった症例では3例に術後旗孔がみられた。これらはいずれも初期に手術した症例で,粘骨膜が足りなかったにもかかわらず人工真皮を使用しなかったためである。最近は粘骨膜の欠損がある症例には全例に人工真皮を使用しており,術後成績は向上している。粘骨膜が足りて人工真皮を使用しない症例ではもちろん術後合併症はない。人工真皮は子牛の真皮由来のコラーゲンより生成され,移植骨の鼻腔との交通を遮断すると共に,徐々に肉芽組織に置き換わり,周りから粘膜が再生する手助けになっていると考えた。また,人工真皮を使ったための副作用,感染,アレルギー反応などはなかった。われわれの経験では,術後人工真皮が粘骨膜に置き換わっているのか,粘膜が張る手助けとなっているのか,確かめる事はできなかったが,.提示したような粘骨膜の欠損した症例に使用して有用であることがわかった。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205452915712
  • NII論文ID
    130004586456
  • DOI
    10.11224/cleftpalate1976.25.1_63
  • ISSN
    03865185
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ