イネ黄化萎縮病の後期感染機構

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  • (1)病徴発現様式による解析

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本報告はイネ黄化萎縮病の後期感染機構について, その病徴発現様式を解析した結果である.<BR>1. イネの第1本葉抽出後の後期感染において, 冠水時葉位と病徴発現葉位の間に明らかな規則性が認められる.<BR>2. 冠水時すでに抽出展開していた葉において病徴が現われることは全くない. しかしまれには冠水後抽出する第1葉目に病徴を現わすが, 多くの場合典型的病徴をあらわすのは2~3葉目からである. なお冠水時未出現の分げつ芽が発病する場合には本葉のすべてに明瞭な病徴が現われる.<BR>3. 母茎ならびに分げつ茎ともに, 病徴発現はすべてほぼ同時に抽出する同伸葉において認められる.<BR>4. 一般に母茎葉鞘の切開または切断処理によつて幼若組織を露出せしめると発病を助長する.<BR>5. かかる処理の効果は処理位置によつて異なり, 葉鞘上部 (完全展開最上葉の葉舌下部) 処理では分げつの発病を助長するのみであるが, 処理部位を下げて生長点に近づけるに従つて母茎の発病を助長し, 発病率は著しく増加する. しかし, 切断処理では分げつ芽の出現が著しく抑制されるので分げつ芽の発病は助長されず, 母茎の発病が促進されるにすぎない.<BR>6. 処理位置の差異は, 各次各号分げつにおける発病茎出現状況に著しい特徴をあらわす. すなわち, 母茎葉鞘上部の露出処理は上位の分げつ芽のみを発病せしめるが, 処理部位を下げ, 生長点に近づけるに従つて発病分げつ位も下り, 母茎の発病もまた著しく増加する. しかし接種時すでに出現生育している下位分げつ芽の発病は全く, または殆んど助長されない.<BR>7. 幼若組織の露出部位が生長点に近ずくに従つて, 発病葉出現までに抽出する外観健全葉の葉数は減少する傾向が見られ, 基部露出処理においては新たに抽出する葉から直ちに病徴が現われることもある.<BR>8. 以上の観察結果から, 本病の後期感染においては発病にまで進展しうる主な寄主体侵入部位は展開葉の葉鞘に包まれた未抽出の幼若組織である. しかしてかかる侵入部位が生長点に近い程発病は容易である. 侵入した菌糸は一旦寄主組織内を下降して生長点およびその周辺組織に蔓延し, ついでそれら組織から発育した葉に病徴を現わすに至るものと推論される.<BR>9. 接種時すでに母茎の葉鞘外に出現していた分げつ芽が感染しそれより菌糸の組織内移行によつて母茎が感染することはないかまたは極めて起り難い. しかし, 葉鞘の下部深く包まれていた未出現の分げつ芽が感染した時には, 母茎への菌の移行蔓延は可能のようである.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205463142528
  • NII論文ID
    130004991986
  • DOI
    10.4165/kapps1958.3.0_15
  • ISSN
    03871002
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • Crossref
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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