モクズガニEriocheir japonicus(DE HAAN)の卵発生と卵サイズの変異

  • 小林 哲
    Department of Fisheries, Faculty of Agriculture, Kyushu University
  • 松浦 修平
    Department of Fisheries, Faculty of Agriculture, Kyushu University

書誌事項

タイトル別名
  • Egg Development and Variation of Egg Size in the Japanese Mitten Crab Eriocheir japonicus (DE HAAN)

抄録

海域におけるモクズガニEriocheir/aponicusの卵発生過程と卵サイズの変異を調査した.福岡県津屋崎町の海域において,1990年2月から1991年8月にかけての1年7か月間,ほぼ2~3日に1度の割合で手網による採集を行った.雌個体は自然海水の流水下で個別に飼育し,産卵・抱卵・孵化の日を記録した.2~3日に一度の割合で卵を採取して発生段階を観察し,卵径を測定した.発生に要する時間には15日(10月産卵)から79日(1月産卵)の幅があり,水温の低下とともに延長し,上昇とともに短縮した.孵化には月齢との同調あるいは他の周期性は認められなかった.卵径の平均値は232μmから434μmの範囲であり,発生段階と季節により違いが認められた.卵径は卵割初期にやや縮小したのち孵化直前まで増大した.また,孵化直前の卵径は9月から4月にかけて増大し4月から7月にかけて縮小する傾向が認められた.発生段階中の最小平均卵径と孵化直前の平均卵径には相関関係が認められ,最小平均卵径と産卵時の水温には弱い負の相関関係が認められた.発生による卵径増大率(最小平均卵径に対する孵化直前の平均卵径の比率)は118~128%であり,水温と負の相関関係が認められた.つまり暖かい季節には小さめの卵が産み出され,発生中の卵サイズの増大も小さくなる傾向が,卵径の季節変動を生み出していると考えられた.

収録刊行物

被引用文献 (8)*注記

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