症例 右室枝病変による孤立性右室梗塞の1例

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タイトル別名
  • Isolated cright ventricular myocardial infarction caused by right ventricular branch lesion-A case report

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説明

症例は54歳男性.前胸部痛を主訴に来院し,心電図にてV3R,V4R,V1~4のST上昇,断層心エコー図にて右室自由壁の運動低下を認めた.発症5時間後に心臓カテーテル検査を施行したところ,左室造影所見は異常なかったが,冠動脈造影にて右冠動脈より分岐する太い右室枝の近位部に著明な狭窄を認めた.右室造影を施行したところ,右室心尖部を中心とする壁運動低下を呈したが,圧所見および心係数は正常域にあり,以後血行動態の異常をきたすことなく順調な経過をたどった.血清CRK最高値は胸痛出現後15晴間で802 IU/l(CPK-MB103 IU/l)であった.本例は右冠動脈より分岐する右室枝を責任血管とし,右室自由壁に限局する孤立性右室梗塞と考えられた.右室梗塞例の大部分は,冠動脈の解剖学的特性から左室の後下壁梗塞に合併するため,孤立性右室梗塞はまれであるが,本例のように右室枝病変による孤立性右室梗塞例の報告はなく,極めてまれである.また,血行動態指標が正常であった理由として,右室自由壁の障害が比較的軽度であったことと,心室中隔を含む左室の障害が存在しなかったため,これによる右室機能への影響がなかったことが考えられた.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 20 (12), 1438-1444, 1988

    Japan Heart Foundation

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