症例 剖検により診断された原発性悪性心膜中皮腫の1例

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タイトル別名
  • An autopsied case of primary malignant cardiac mesothelioma

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抄録

心外膜原発の中皮腫はまれな疾患で,生前に診断が困難であることが多い.感冒様症状を契機に心不全が増悪して死亡し,剖検により原発性悪性心膜中皮腫と診断した1例を報告する.症例は62歳男性.咳嗽・喀痰とともに息切れ,下肢の浮腫が出現し徐々に増悪するため受診.急性心不全の診断で入院した.両側胸水および心嚢液の貯留を認め,胸水穿刺を施行したが単核球を主体とした炎症細胞を認めるのみであった.その後心不全が増悪し2カ月後死亡した.<BR>剖検では心基部から心尖部まで全周性に強固な線維性癒着がみられ,心室横断面は両室ともに約2cm厚の灰白色~淡黄色の硬い結節で全周性に取り囲まれていた.両側胸膜には同様の癒着や結節はみられなかった.組織学的には心外膜に沿って著明な線維組織の増生とともに大小不同の核を有する立方状の異型細胞が胞巣状に増殖し,部分的に壊死を伴い乳頭状の増殖もみられた.免疫染色では異型細胞は中皮関連抗原のカルレチニン,HBME-1が陽性で,悪性心膜中皮腫と診断した.心膜中皮腫は非特異的な心不全症状を呈し,著明な心膜の癒着を伴うことが多い.心膜生検や心嚢液の細胞診でも診断に苦慮する症例が多い.本症例は胸膜などの他の部位の中皮腫同様,中皮関連抗原による免疫染色が鑑別診断に有用であった.<BR>今後,心膜中皮腫においても臨床的な鑑別診断および早期診断にこれらの免疫染色が有用であると考えられた.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 35 (8), 588-593, 2003

    Japan Heart Foundation

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