書誌事項
- タイトル別名
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- STABILITY OF HIGH MOLECULAR WEIGHT ANTICANCER AGENT SMANCS AND ITS TRANSFER FROM OIL-PHASE TO WATER-PHASE
- COMPARATIVE STUDY WITH NEOCARZINOSTATIN
- 特にネオカルチノスタチンとの比較
説明
ネオカルチノスタチン (NCS) は,放線菌 (Streptomyces carzinostaticus val.-41) が産生する蛋白性の抗悪性腫瘍抗生物質 (分子量約 11,700) である。このNCSに対してスチレン・マレイン酸の合成コポリマーであるSMA (分子量約 1,500) と結合し, その親油性及び分子量を増大させたものがスマンクス (SMANCS, 分子量約15,000) である。スマンクスの合成, 生物活性, 抗癌活性, 血中安定性, 造器・組織親和性, 特に腫瘍親和性等についてはこれまで当研究室からいくつかの報告として発表されている1~5)。スマンクスの制癌作用の主体はNCSと同様に分子レベルでは直接的なDNA切断とその合成阻害とが考えられているが, 間接的な制癌作用機構については現在解明されつつある。<BR>一方, スマンクスの薬理学的な性質がNCSと大幅に異なつていることは我々の指摘しているところである。すでに報告したように2), スマンクスの血液中での安定性についてはすでに調べられており, 残存活性が50%まで低下する時間 (T1/2) で比較すると, もとのNCSより10~20倍安定になつていることがわかつている。<BR>更に又, スマンクスは親油性が増大し油性リンパ管造影剤であるLipiodolにもかなり溶けるようになる。このためスマンクスをLipiodolに可溶化し, 油剤とすることにより腫瘍へのターゲッティングができるようになつた3, 4)。すなわち, 油剤を腫瘍動脈から動注すると選択的に腫瘍局所に停滞するためである6)。更に高分子化によつてもこの腫瘍親和性が増大していることは水性スマンクスの静注により明らかにされている2, 4)。この機構は腫瘍における新生血管の増生, その漏出性の亢進, 更にリンパ系の欠如等によつており, これがスマンクスの腫瘍選択性の増大の理由と考えられている2~5)。<BR>今回, まずスマンクスとNCSについて種々の物理的条件下で安定性の違いを検討し, 次に油剤化スマンクスの油系から水系への移行を定量的, 経時的にin vitroで検討した。すなわち油剤化スマンクスが癌組織の存在する水系で有効にその効果を発揮するためには, 薬剤が油系から水系へ充分に移行することが必要である。従つて油から水への移行を, in vitroでモデル的に調べることは重要な意味を持つていると言える。これを裏付けるために更に培養癌細胞に対して油剤化スマンクス添加時の細胞毒性について検討した。
収録刊行物
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- The Japanese Journal of Antibiotics
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The Japanese Journal of Antibiotics 39 (3), 815-822, 1986
公益財団法人 日本感染症医薬品協会