ラット尿, 涙液および唾液から検出される標識遺伝子座の研究

書誌事項

タイトル別名
  • Studies on the Biochemical Marker Loci Detected with Urine, Tears, and Saliva of Rats
  • ラット尿,涙液および唾液から検出される標識遺伝子座の研究〔英文〕
  • ラット ニョウ ルイエキ オヨビ ダエキ カラ ケンシュツサレル ヒョウシキ

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抄録

ラットにおける標識遺伝子座として利用価値の高い生化学的遺伝子座の開発を目的として, 生体のまま容易に採取可能な, 尿, 涙液および唾液を試料とした電気泳動を行い, 幾つかの蛋白あるいは酵素に遺伝的多型を見いだした。ラット尿pepsinogenの電気泳動による多型を支配する遺伝子座 (Pg-1) がアルビノ遺伝子座 (LG I) と連鎖があるという報告 (Cramer, 1881) に基づき, Pg-1 (urinary pepsinogen-1) , c, およびHbb遺伝子座の3点テストを行った結果, Pg-1はcともHbbとも連鎖が認められず, LGIには属さないことが強く示唆された。また, 雌尿を濃縮することにより, ポリアクリルアミドゲルを支持体とした電気泳動法により, 雌からも雄の泳動型とは少し異なるものの, MUP-1蛋白を検出することができた。この蛋白の発現を支配する遺伝子座は, 雄Mup-1 (male urinary protein-1) 遺伝子座同様LGIIのb遺伝子座と連鎖していることを確認した。涙液蛋白中からは, アガロースゲルを支持体とした電気泳動法により2種類の遺伝的多型を見いだし、これらの蛋白の発現を支配する遺伝子座を, それぞれRtp-1 (rat tear protein-1) およびRtp-2 (rat tear protein-2) と命名した。Rtp-1はLGIIに属し, Mup-1と非常に近い位置にある遺伝子座であることが確認された。また, RTP-1蛋臼は, 抗ラットMUP-1抗体を用いて, MUP-1蛋臼と共通抗原を持つことが確かめられた。RTP-1はMUP-1と異なる蛋白ではあるものの, その遺伝子の染色体上の位置は非常に接近しており, その産物が同じ抗原性を持つことから, 同一の遺伝子ファミリーに属するものと推察された。Rtp-2はLGIのcとゆるく連鎖しており, 両遺伝子座間の組換価は36.7±5.4%であった。唾液蛋白中からも, ポリアクリルアミドゲルを支持体とした電気泳動法により, 2種類の遺伝的多型を見いだし, これらの蛋白の発現を支配する遺伝子座を, それぞれRsp-1 (rat salivary protein-1) およびRsp-2 (rat salivary protein-2) と命名した。Rsp-1はLGI, II, IV, VならびにAcp-2およびPg-1を含むLGには属さず, Rsp-2はLGI, II, V, XならびにAmy-1, Es-6およびPg-1を含むLGに属さないことが判明した。これらの遺伝子は, ラット近交系間に広く多型が存在していること, また生体のまま容易に採取可能なことから, 有用な標識遺伝子になるものと考えられた。

収録刊行物

  • Experimental Animals

    Experimental Animals 43 (1), 1-9, 1994

    公益社団法人 日本実験動物学会

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