自治体病院の医業収支推移に関する規模別要因分析

  • 大坪 徹也
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療経済学教室
  • 今中 雄一
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療経済学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Determinants of change in the revenue to cost ratio of municipal hospitals by scale in Japan
  • ジチタイ ビョウイン ノ イギョウ シュウシ スイイ ニ カンスル キボベツ ヨウイン ブンセキ

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抄録

目的 一般会計負担金を除外した医業収支比率の変化と関連する要因の把握。<br/>方法 主に急性期医療を提供する自治体病院を選定し(n=436),病床数による規模別(100床未満,100-299床,300床以上)に重回帰分析を行った。従属変数は一般会計負担金除外医業収支比率の変化とし,独立変数は患者数の変化,患者単価の変化,費用の変化,期首資産状況とした。また,人口増加率などの外部環境要因を調整変数とした。病院財務データを2003および2004年度の地方公営企業年鑑から参照した。また,地域関連データは,住民基本台帳人口要覧,国勢調査報告,市町村税課税状況等調から市町村別に参照した。<br/>結果 病床規模により収支の変化との関連要因が異なることが確認された。収支の変化に対して外来患者数の変化と入院患者単価の変化はいずれの病床規模群においても共通に有意な項目であり,病床規模が小さいほど関連が強くなる傾向が示された。費用の変化に関する項目のうち,収支の変化と有意な関連を示した項目は病床規模群により異なり,職員給与費の変化と収支の変化との関連は必ずしも有意ではなかった。また,300床以上群では研究研修費の変化が収支の変化と有意な正の関連を示した。<br/>結論 収支の改善に向けての病床規模別検討課題は,以下のように考えられる。<br/> 100床未満群では,外来患者数と外来患者単価の増加が強く収支の改善と関連し,とくに,総じて減少傾向にある外来患者数の確保が重要な検討課題となろう。したがって,外来機能の縮小や分離については,持続可能な経営に向けて慎重な議論を要すると思われる。<br/> 100-299床群では,入院外来患者数の確保および入院患者単価の増加が収支の改善と強く正に関連し,財務改善のためにはこれらを中心とした収益強化が検討対象となろう。すなわち,限られた経営資源の中で如何に外来機能と入院機能を維持し調整するかが問われる。<br/> 300床以上群では,減価償却費の増加と収支の改善に強い負の関連がみられ,設備投資の大きさやその時期の適切性の判断が収支に大きく関連することが確認された。また,研究研修活動への投資の増加と収支の改善において正の関連がみられたが,因果の方向性については更なる研究が望まれる。

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参考文献 (25)*注記

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