ドメスティック・バイオレンス(DV) —公衆衛生の視点から—

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タイトル別名
  • DOMESTIC VIOLENCE   —PUBLIC HEALTH PERSPECTIVES
  • ドメスティック・バイオレンス(DV)--公衆衛生の視点から
  • ドメスティック バイオレンス DV コウシュウ エイセイ ノ シテン カラ

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抄録

 ドメスティック・バイオレンス(domestic violence; DV)とは,夫など親密な関係にある男性から女性に対する暴力のことである。DV は女性の人権侵害であるとともに健康に関わる問題であるが,複雑な背景要因の存在する DV に対して,公衆衛生の視点からいかに介入していくかが課題である。<br/> 本稿の目的は,日本および世界各地でこれまでに実施されてきた,多方面からの DV 対策について概観し,日本における,今後の保健医療分野からの取り組みの方向性を展望することである。<br/> これまでに,DV 対策法の整備,緊急支援としてのシェルターの提供,NGO による支援活動,あるいは暴力加害者への介入など,多方面から DV に対する取り組みがなされてきた。保健医療分野では,欧米での医療従事者に対する体系的 DV 教育や,アジアや南米での医療機関を中核とする DV 被害女性支援ネットワーク形成などが実施されてきた。<br/> 保健医療分野からは,幅広い DV 対策のなかでも,DV 被害女性の早期発見と治療,DV 再発の予防に貢献できると考えられる。しかし,これまでは,保健医療従事者に対する体系的 DV 教育が不足しており,医師と被害女性の認識にずれがあったり,DV に対する理解不足のため発見できなかったり,他の関連機関との連携不足により対応困難であったりした。<br/> 日本でも,今後は,保健医療分野からも DV 対策に積極的に取り組むべきであると考えられる。たとえば,母子保健事業の一環として,児童虐待と DV に対して包括的に取り組んでいけるのではないであろうか。また,欧米の医療従事者教育を参考に,マニュアルやガイドラインを整備し,第一線の医療者の意識を変えていく必要がある。さらに,これまでの各方面からの取り組みを評価・検証して,より有効な対策法を検討していくべきである。

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参考文献 (31)*注記

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