遺伝子解析を用いた結核感染の長期経過後の発病実態の把握とその有用性

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タイトル別名
  • Utility of gene analysis for evaluation of the current status of tuberculosis developing long after primary infection
  • イデンシ カイセキ オ モチイタ ケッカク カンセン ノ チョウキ ケイカゴ ノ ハツビョウ ジッタイ ノ ハアク ト ソノ ユウヨウセイ

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抄録

目的 感染から長期経過後に発病した結核患者の感染実態把握と感染源究明の一手段として,結核菌の遺伝子解析の有用性を検討する。<br/>方法 2004年度に岡山県内で発生した,慢性排菌患者が関与した 2 つの結核感染事例を対象とした。患者から分離された結核菌の DNA を抽出し,IS6110をプローブとした RFLP(restriction fragment length polymorphism 制限酵素断片長多型)解析(以下 IS6110-RFLP と略す)および,PGRS(polymorphic GC-rich repetitive sequence)をプローブとした RFLP 解析(以下 PGRS-RFLP と略す)を行って菌株間の相同性を調べた。疫学調査で感染源の推測が難しかった事例は,1999年12月から県内の結核新登録患者分離株の RFLP パターンを集積している RFLP データベースと照合し,パターン一致株の有無を調べた。また,結核菌の Rifampicin(RFP)耐性に関与する rpoB 遺伝子と,Isoniazid(INH)耐性に関与する katG 遺伝子の変異を,リアルタイム PCR による融解曲線分析で検出した。薬剤感受性は,微量液体希釈法および小川培地による比率法で調べた。<br/>結果 事例 1 では,疫学調査により同一患者から 2 人が約20年を経て感染したことが疑われた。分離株の薬剤感受性パターンと薬剤耐性に関与する遺伝子の変異状況が異なっていたが,IS6110-RFLP パターンがほぼ一致し,かつ,PGRS-RFLP パターンも一致したため,同一株の可能性が高いと考えられた。事例 2 では,医療従事者が初回多剤耐性結核を発病したが,感染源が不明であった。そこで,分離株の IS6110-RFLP パターンを RFLP データベースと照合した結果,4 年 8 か月前に多剤耐性結核で死亡した慢性排菌患者からの分離株と一致した。また,薬剤感受性パターンと薬剤耐性に関与する遺伝子の変異状況も一致した。両者は,同一病院の職員と患者であったため,院内感染と考えられた。<br/>結論 感染から長期経過後に発病した結核患者の感染実態の把握と感染源究明において,結核菌の遺伝子解析は,有用な情報を提供し,接触者健診を科学的に支援した。また,結核菌の遺伝子型データベースを構築し,疫学情報に基づいて的確に解析することで,接触者健診だけでは把握できない感染源の検出に繋がることが示唆された。

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