医療等分野における番号制度導入への医師を対象にした意識調査

  • 高橋 由光
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野 ハーバード公衆衛生大学院社会行動科学学科
  • 瓜生原 葉子
    同志社大学商学部
  • 井上 真智子
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野 浜松医科大学地域家庭医療学講座
  • 岡本 茂
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野
  • 柏原 英則
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野
  • 鬼頭 久美子
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野
  • 篠原 圭子
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野
  • 萬代 真理恵
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野
  • 森岡 美帆
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野 高知学園短期大学生活科学学科
  • 田中 司朗
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻薬剤疫学分野
  • 川上 浩司
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻薬剤疫学分野
  • 中山 健夫
    京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Awareness survey of Healthcare Number System pros and cons according to medical doctors in Japan
  • イリョウ トウ ブンヤ ニ オケル バンゴウ セイド ドウニュウ エ ノ イシ オ タイショウ ニ シタ イシキ チョウサ

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抄録

目的 マイナンバー制度が2013年に成立し,医療等分野における番号制度(医療等 ID)が検討されている。しかし,医師が抱いている医療等 ID 導入への問題意識は明らかになっていない。医療等 ID 導入に対する医師の賛否および特徴を明らかにすること,医師が医療等 ID 導入に対して抱いているメリット・デメリットを明らかにすることを目的とした。<br/>方法 医師を対象としたインターネット調査による横断研究である。有意抽出サンプルである調査パネル医師会員より 4 群(病院勤務45歳未満,病院勤務45歳以上,診療所勤務45歳未満,診療所勤務45歳以上)で層別サンプリングを行った。主要評価項目は,医療等 ID 導入賛否であり,医療等 ID のメリット・デメリットに対する回答を自由記述で収集した。4 群別に医療等 ID 導入賛否の割合を算出し,多重ロジスティック回帰分析にて医療等 ID 導入賛否に関連する要因を検討した。メリット・デメリットの回答に対して質的内容分析を行った。<br/>結果 回答者は562人(回答率68%)。医療等 ID を「必要だと思わない」人は,各群16/143人(11%),25/138人(18%),31/132人(23%),43/149人(29%)であった。「必要だと思わない」人に有意に関連した項目は,年齢(5 歳ごと)(オッズ比[95%信頼区間]:1.14 [1.01-1.29]),勤務医療機関(診療所勤務)(1.99 [1.30-3.08])であった。メリットとして,情報の一元化により医療機関業務の軽減および医療機関の連携による不適切な受診行動の抑制が行われ,医療費の削減,個々の患者のための医療の実現が行われることが挙げられていた。デメリットとして,情報の連携およびビッグデータ時代に対応することで,情報漏えい対策・情報管理作業の増加,連携情報に拘束される医師,連携情報の不適切な利用が挙げられ,医療サービスの悪化にもつながりかねない。連携すべきでない情報もあり,プライバシーに関する倫理的配慮が不可欠である。<br/>結論 医療等 ID を不必要と考える医師は 1-3 割であり,年長者,診療所勤務という特徴があった。医療費の削減,個々の患者のための医療の実現につながるメリットがある半面,情報漏えい対策,医師が連携情報に拘束される危険性,連携情報の不適切な利用等のデメリットもある。情報を保護しながら利活用するためには,倫理的配慮が不可欠である。医療等 ID 導入には,医師の特徴・意識を考慮しつつ,情報の利活用目的に応じた利活用可能な情報の種類とその提供対象に関する社会的合意形成が求められる。

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