外来がん患者が抱える主治医と話すことへのためらいと患者のコミュニケーション行動との関連

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タイトル別名
  • Relationship between Hesitation in Speaking with Primary Doctors and Communication Behaviors Among Cancer Outpatients
  • ガイライ ガン カンジャ ガ カカエル シュジイ ト ハナス コト エ ノ タメライ ト カンジャ ノ コミュニケーション コウドウ ト ノ カンレン

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抄録

患者と医師とのコミュニケーションは、がん患者の身体的・精神的負担の軽減において重要な役割を担っている。しかし、主治医に話すことにためらいを感じ、伝えるべきことや聞きたいことを伝えられずにいるがん患者は少なくない。外来患者が主治医に話す際に抱くためらいについては、「情報の取捨選択に対する葛藤」と「主治医へのあきらめ」の2因子で構成されていることが示されている。本研究では、患者の満足度と関連する患者のコミュニケーション行動を明らかにし、次に、主治医に話すことへのためらいが外来がん患者のコミュニケーション行動とどのように関連しているのかを明らかにすることを目的とした。補完代替療法を行っている都内のがん専門クリニックに通院する成人がん患者51名に質問紙調査を実施した。調査内容は、フェイスデータ、診察場面において患者が主治医に話すことへのためらい、診察場面における患者のコミュニケーション行動、および診察に対する満足度であった。なお、対象者は、当該クリニック(補完代替療法)の医師ではなく、がんの主たる治療を行っている病院の主治医とのコミュニケーションについての評価を行った。患者のコミュニケーション行動と診察に対する満足度との関連を検討するために、患者の年齢、がん種、就業状態を制御変数として、患者のコミュニケーション行動の各下位尺度と診察に対する満足度について、偏相関係数を算出した。その結果、情報提供行動および行動の全体評価と診察に対する満足度について、有意な弱い正の相関関係が認められた(p<0.05)。また、情報検証行動と診察に対する満足度については、年齢を制御変数とした場合には有意な弱い正の相関関係(p<0.05)、がん種および就業状態を制御変数とした場合には、有意傾向の弱い正の相関関係が認められた(p<0.10)。医師に話すことに対する患者のためらいと患者のコミュニケーション行動との関連を検討するために、患者の年齢、がん種、就業状態を制御変数として医師に話すことへの患者のためらいの下位尺度と患者のコミュニケーション行動との関連を検討した。その結果、葛藤について、情報提供行動、質問行動、希望表明行動、情報検証行動、行動合計得点との間に有意(p<0.05)または有意傾向(p<0.10)の負の相関関係が認められた。また、あきらめについて、希望表明行動、行動合計得点との間に有意(p<0.05)または有意傾向(p<0.10)の負の相関関係が認められた。 本研究の結果から、診察に対する患者の満足度の向上には、情報提供行動および情報検証行動が特に重要であることが示された。また、それらの行動は、患者の情報の取捨選択に対する葛藤によって阻害されている可能性が示された。主治医は患者からの詳細な情報提供を望んでおり、診察場面において患者からより多くの質問を望んでいることから、患者が質問することに対する主治医の希望について、患者へ心理教育を行うことが有用であると考えられる。また、看護師や心理士による、主治医から患者へのコミュニケーションを橋渡しする関わりも同様に求められるといえる。

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