ロボット支援膀胱全摘除術の導入

  • 岩本 秀人
    鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 腎泌尿器学分野
  • 眞砂 俊彦
    鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 腎泌尿器学分野
  • 森實 修一
    鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 腎泌尿器学分野
  • 本田 正史
    鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 腎泌尿器学分野
  • 瀬島 健裕
    鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 腎泌尿器学分野
  • 武中 篤
    鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 腎泌尿器学分野

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  • ロボット シエン ボウコウ ゼンテキジョジュツ ノ ドウニュウ

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転移のない浸潤性膀胱癌に対する標準術式は開放性膀胱全摘除術(open radical cystectomy:ORC)であるが,ORCは泌尿器科手術の中でも最も高侵襲な手術に位置づけられている.一方,ロボット支援膀胱全摘除術(robot-assisted radical cystectomy:RARC)は,2003年に報告されて以来,ORCより遥かに低侵襲で,かつ同等の腫瘍制御を有すると報告され,近年注目を集めている. <br> RARCは米国において年々増加傾向にあり,本邦では未だ保険収載されていないものの,徐々に普及の兆しを見せている. <br> 近年,RARCとORCを比較した論文やreviewが数多く報告され,RARCの有用性が検討されている.RARCの特徴として,周術期治療成績については,ORCと比較して遥かに低侵襲であることが強調されており,自験例でも同様の結果であった.一方,腫瘍制御については,RARCの長期予後に関する報告は未だ少ないが,リンパ節摘出数や断端陽性率の点では,ORCとほぼ同等であるとされている.また,ラーニングカーブについては,他施設の前向き研究に基づくデータでは,約30例の経験でacceptableな基準に到達できるとされ,さらにロボット支援前立腺全摘除術(robot-assisted radical prostatectomy:RARP) の経験値によってもoutcomeの改善が期待できると報告されている. <br> これらの点を考慮すると,RARCはORCと比較して有用性が高く,RARPを経験した術者が次のステップとして導入するのに適した術式と言える. <br><br> 2009年11月に手術用ロボットであるda Vinci S HDTMサージカルシステム(ダヴィンチシステム)の製造販売が初めて国内で薬事承認された.本邦の薬事承認領域は,一般消化器外科,胸部外科(心臓外科を除く),泌尿器科,及び婦人科領域であり,中でも泌尿器科領域(特に前立腺全摘除術)における活用の割合は高い. <br> このダヴィンチシステムを用いたロボット支援手術は,まさに最先端のテクノロジーを駆使した手術法であり,3次元立体画像(3D画像)による拡大明視野,多関節鉗子や手ぶれ防止機能による自由度の高い繊細な操作性,更には遠隔操作による術者への肉体的負担の軽減などにより,これまでの開腹手術や腹腔鏡手術では不可能であった操作をも可能にする,外科手術の歴史における革命的技術革新と言っても過言ではない. <br> 本邦では,2012年4月にロボット支援前立腺全摘除術(robot-assisted radical prostatectomy:RARP)が保険収載されて以降,ロボット支援手術は爆発的に普及が進んでいる.さらに,RARPの症例数が増加するにつれ熟練した術者では,RARPの次のステップとして腎部分切除術や膀胱全摘除術,腎盂形成術などへの応用が既に開始されている.中でもロボット支援根治的膀胱全摘除術(robot-assisted radical cystectomy:RARC)は,RARPと共通した手術手技を多く含む点で,次のステップとして導入するのに適した術式と言える. <br> 本稿では,これからRARCを導入する術者へのBasic knowledgeとして,RARCの普及状況,周術期成績,腫瘍制御,ラーニングカーブなどの観点を中心に解説する.

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