血液型表裏不一致症例から検査部門の情報共有を考える

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抄録

【はじめに】<BR> 臨床検査部門は、検査の種類によって多くの分野に分かれているが、近年は業務の効率的な運用を可能にするためワンフロアー化が進んでいる。これにより、現在では部屋ごとの見える壁のみでなく心の中の壁も取り除かれ、患者検体の共有や情報の共有も図れるようになった。<BR> 今回、血液型検査において表試験と裏試験が不一致の症例を経験した。最終的には寒冷凝集素による影響であることが判明したが、輸血検査・血清検査・血液検査の3分野に渡り悪影響を及ぼし、分野間の連携と情報共有化の必要性を痛感しましたので検討結果を合わせて報告する。<BR>【対象および方法】<BR> 血液型試験にて表試験・裏試験の結果が不一致となった症例および高寒冷凝集素価の患者血清を対象に検討した。<BR>1)血液型・抗体スクリーニンク゛・・通常の室温実施と試薬・試験管など暖めた状態での検査を行なった。<BR>2)血球計数・・・・・・採血直後測定および機器立ち上げ直後、立ち上げ後2時間、立ち上げ後2時間で検体4℃保存の4条件についてXT-1800(シスメックス)を使用して測定した。<BR>3)寒冷凝集素価測定・・4℃、12℃、20℃、24℃(室温)、30℃、37℃の6段階の温度環境において試験管法により検査した。<BR>【結果】<BR> 対象患者の血液型検査は、室温実施で抗A(4+)・抗B(-)、A血球(+)・B血球(4+)で不一致となり、暖めた状態でも抗A(4+)・抗B(-)、A血球(±)・B血球(4+)で不一致となった。抗体スクリーニンク゛においても生食法では自己対象を含めサージスクリーン・ディエゴの5種血球全てが室温で(+)・37℃で(±)となった。最終的には、37℃にて自己抗体を乖離させた自己血球による自己抗体吸収を行った血清による血液型検査・抗体スクリーニンク゛を行なった。<BR> 血球計数では、採血直後の実施と比較して他の3条件では全てRBC・HT・MCHの減少とMCV・MCHCの増加を示した。<BR> 寒冷凝集素価測定では、対象患者は256倍であったが20℃においても128倍の力価があり8000倍の高値患者が4倍以下に低下したことと対比すると特異な症例であることが明らかとなった。<BR>【考察およびまとめ】<BR> 今回の症例は、寒冷凝集素価は256倍と際立って高値ではないが、20℃においても128倍の力価が残存する特異な症例であったため室温で検査をする血液型検査などにも影響を及ぼしたと考える。寒冷凝集素価として測定されるものの中にも、ク゛ロフ゛リンの僅かな相違により性質的にはかなり異なったものを含んでいることが明らかとなった。<BR> 結果的には、血液検査・輸血検査・血清検査の3分野に渡る影響を及ぼしたことになり、各分野の連携が重要であることを知らされた症例である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205517228800
  • NII論文ID
    130006943808
  • DOI
    10.14879/nnigss.54.0.123.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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