術中体温変化の実態調査
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- Other Title
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- ~全身麻酔から見えたもの~
Description
〈はじめに〉日頃から麻酔覚醒後、患者によ ってはシバリングや末梢冷感があり、「寒い」 という訴えが聞かれていた。しかし、術中の 体温変化は明らかにされていなかった。そこ で、患者の体温はどのように変化しているの か、またどのような要因が影響しているのか 当院での現状を実態調査したので報告する。 〈研究方法〉術中体温の上限(1番高い体温) と下限(1番低い体温)の差を体温とし、全 体の平均値と標準偏差(-0.2±0.5℃)を導き 出した。-0.2±0.5℃を指標とし、それ以上 (0.4℃以上)をA群、それ以下(-0.8℃以 下)をB群とに分類した。体温に影響を与え ると考えられている要因(性別・年齢・術式・ 手術時間・BMI)の中で性別・術式につい ては割合で比較し、年齢・手術時間・BMI については標準偏差内・A群・B群に分け、 それぞれの平均値と標準偏差を導き出し、標 準偏差内とA群、標準偏差内とB群でt検定 を行い比較した。 <結果および考察〉標準偏差内が全体の7割 以上を占め、対象のほとんどで体温低下が認 められた。尾崎は「全身麻酔導入後約1時間 で0.5~2℃の低下が観察される」と述べてお り、そのことからも全身麻酔薬によって体温 は低下しやすいと考えられる。 性別では男女共に標準偏差内が大半を占 め、男性ではB群、女性ではA群の割合が高 かった。しかし、今回の調査では対象者の男 女比が大きく性別による正確な比較は難しい と考えられる。 術式では、開胸・開腹、腹腔鏡下、その他 共に標準偏差内が多かった。開胸・開腹では A群の割合が高かったのに対して、その他で はB群の割合が高かった。それは、整形外科 の手術で特殊な体位をとるものが多く、開 胸・開腹に比べ被覆できない体表部分が大き かったためと考えられる。 手術時間では、A群の手術時間の平均値が 長く、B群の平均値が短かった。このことは 中枢温は末梢血管拡張により急激に低下した 後、外気温の温度勾配による身体表面の熱喪 失によりゆっくりと下降し、3~4時間後中 枢温は安定し変化しなくなると言われており、 A群では熱産生と同程度になり、B群ではこ れらの経過を辿る前に手術が終了したためと 考えられる。 年齢では標準偏差内の平均年齢よりA群、 B群の順に平均年齢が低くなった。高齢者で は、基礎代謝の低下、体温調節反応の減弱に より、体温が低下しやすいと言われている。 しかし、尾崎は「加齢による身体機能の変化は 高齢になるほど個人間のばらつきが大きくな る」と述べているように、高齢者は体温が変動 しやすく、体温低下の起こり方も個人差が大 きいと考えられる。 BMIでは、A・B群共にBMIの標準(19.8 ~24.2%未満)に該当していた。標準偏差内よ りA群は高く、B群は低いということからも、 皮下脂肪が少ないということは熱が周囲に逃 げやすい状況にあると考えられる。 年齢・手術時間・BMIそれぞれt検定を行 った結果、標準偏差内とA群、標準偏差内と B群、ともに統計学的に有意差は見られなか った。 〈おわりに〉術中の体温変化はひとつの要因 による影響だけではなく、様々な要因が関連 しあっておこるということがわかった。今後 も引き続き術中体温管理を行い、各個人に合 わせたよりよい周手術期看護を提供していき たいと思います。
Journal
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- Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu
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Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu 56 (0), 164-164, 2007
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205517264128
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- NII Article ID
- 130006943853
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- ISSN
- 18801730
- 18801749
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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