神経内科・呼吸器内科病棟における褥瘡発生の原因の調査と分析

DOI
  • 染谷 麻矢
    茨城県厚生連総合病院 取手協同病院 (神経・呼吸器)内科病棟
  • 鴻巣 美佐子
    茨城県厚生連総合病院 取手協同病院 (神経・呼吸器)内科病棟
  • 板倉 紀子
    茨城県厚生連総合病院 取手協同病院 (神経・呼吸器)内科病棟
  • 竹之内 美樹
    茨城県厚生連総合病院 取手協同病院 看護部
  • 福山 國太郎
    茨城県厚生連総合病院 取手協同病院 皮膚科

抄録

〈はじめに〉当病棟は神経内科・呼吸器内科であり、介護保険障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準のB,Cランク患者が多い。当院の院内発生褥瘡有病率は0.85%で全国平均の2.3%の半分以下である。しかし、当病棟の発生褥瘡有病率は2.03%と全国平均以下ではあったものの、当院の中では高かった。そこで褥瘡発生の原因について調査・分析し、今後の改善策について検討したので報告する。 <BR>〈期間〉2007年1月~2007年12月 <BR>〈方法〉1.日常生活自立度B,Cランク患者人数、褥瘡が発生した患者22名、25部位の年齢・基礎疾患・日常生活自立度・Alb値・BMI・褥瘡発生部位・深達度・体圧分散寝具の適切な使用率・体位変換の頻度を調査。 <BR>2.病棟スタッフ25名に褥瘡予防ケアの実情・知識・意識に関するアンケートを実施。 <BR>〈結果〉1.当院の日常生活自立度B、Cランク患者は入院全体の19%,当病棟では52%を占めていた。褥瘡発生者の22名については平均年齢71歳で主な基礎疾患は脳梗塞26%、肺炎17%、悪性腫瘍17%、パーキンソン病13%、日常生活自立度はBランク26%・Cランク74%・Alb値2.7g/dl以下が61%、BMI18.5以下の痩せが69%を占めていた。褥瘡の深達度(NPUAP分類)はステージ_I_が26%、ステージ_II_が57%、ステージ_III_が17%となっていた。主な発生部位は仙骨部40%、踵部28%であった。全例で体圧分散寝具を使用していたが、適切に使用できていたのは68%であった。体位変換は3時間で必ず施行していた。 <BR>2.病棟スタッフへのアンケートの中で褥瘡ケアの実情に関する質問では全体の96%が、マンパワー不足により1人で体位変換を行うことがあると回答していた。知識に関する質問では、体圧分散寝具を正しく理解していた看護師は72%であった。一方意識に対する質問では、全員この病棟で褥瘡発生を減少させることが可能だと回答しており、殆どの看護師が発生原因は褥瘡予防対策が不十分で、知識、認識の不足があることと回答していた。 <BR>〈考察〉当病棟は日常生活自立度B,Cランクの患者が他病棟と比較し多い。褥瘡発生した患者の背景は、脳梗塞、肺炎、パーキンソン病などの神経内科、呼吸器内科特有の疾患で、寝たきりで低栄養の患者であった。深達度に関してみると83%が浅い褥瘡であり、早期発見出来ていたが、体位変換を1人で行わざるを得ない状況があったり、経験的に個人の判断で体圧分散寝具を使用していたりした。踵部に深い_III_度の褥瘡が発生していたなど部分的に対策が不十分であった。この褥瘡に関しては完全除圧が可能な場所であり、踵の除圧の徹底で今後減らすことが出来ると考えられた。さらに、全員が知識不足を認識しており、知識の向上で褥瘡発生を減らすことが出来ると実感していることがうかがえた。これらのことより、患者のADLに合わせた体圧分散寝具選択基準に添った適切な使用の再検討と褥瘡予防ケアとして体位変換や背抜きの実技指導、踵部の除圧の徹底、病棟内での勉強会の定期的な実施や、褥瘡委員が中心となり、正しいケア方法を実施、指導していくことが今後の課題であることが明らかになった。 <BR>〈まとめ〉今回の調査分析の結果、当病棟は褥瘡発生ハイリスクの患者が多いが、看護師に十分な知識の行き届かないまま日常のケアが行われている可能性が示唆された。今後は具体的な実技指導をふまえた知識の向上により当病棟の褥瘡発生が減少出来ると思われた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205517772672
  • NII論文ID
    130006944430
  • DOI
    10.14879/nnigss.57.0.173.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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