児童虐待が脳に及ぼす影響

  • 友田 明美
    熊本大学大学院生命科学研究部小児発達学 福井大学大学院医学系研究科附属子どもの発達研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Preliminary Evidence for Neurobiological and Behavioral Consequences of Exposure to Childhood Maltreatment on Regional Brain Development
  • —脳科学と子どもの発達, 行動—

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説明

 児童虐待は, 日本の少子化社会の中でも近年増加の一途をたどっている. 小児期に様々な虐待経験のある被虐待者脳MRI形態の検討により, 虐待や育児放棄による幼少期母子関係の破綻 (愛着形成の障害) が社会性の発達障害を引き起こすこと, さらにその障害が脳の構造機能の変容に起因することが示唆された. 「性的虐待」では, 最初に目に映った情報を処理する脳の視覚野で脳の容積が減ったり, 「暴言虐待」では, コミュニケーション能力に重要な役割を持つ聴覚野で大脳白質髄鞘化が異常をきたしたりすることが明らかになった. 被虐待児に認められる “社会性発達障害” という観点から, こころに負った傷は容易には癒やされないことが予想される. 被虐待児たちの精神発達を慎重に見守ることの重要性を強調したい. しかしながら, 被虐待児たちの脳変成も多様な治療で改善される可能性があると考えられる.

収録刊行物

  • 脳と発達

    脳と発達 43 (5), 345-351, 2011

    一般社団法人 日本小児神経学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (22)*注記

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