小児言語リハビリテーションにおける問題点と言語聴覚士の役割について
説明
<目的>当院では小児言語リハビリテーション(以下小児リハ)を実施している。小児リハの場合、患児の能力に向上が見られても両親が納得できず、終了に至らない症例が見られている。そこで患児の両親を対象として、小児リハに対する考え方を知るための調査を実施した。その結果より言語聴覚士としての役割について、考察を踏まえ報告をする。<BR><対象>対象は当院の小児リハに通院している患児の両親で、全対象数は47名であった。しかし今回は終了に至らない症例を対象とするため、訓練が開始から1年以上経過していること、また嚥下障害や構音障害以外での言語発達障害を有していることを挙げた。結果として全対象47名のうち19名が該当した。<BR><方法>方法は質問紙形式によるアンケート調査とした。調査項目は小児リハでの訓練効果、達成感、心境の変化、家での取り組みの有無、親自身・施設〈幼稚園、保育園、学校〉・小児リハそれぞれへの目標、継続の有無、終了への不安の有無とした。また対象は2歳から6歳までの幼少期、7歳から12歳までの児童期の2群とした。対象19名中、幼少期10名、児童期9名であった。また平均訓練期間は幼少期で1年半、児童期で3年半であった。<BR><結果>小児リハに対し、幼少期及び児童期共に満足しているとの回答が過半数を超えた項目は次の通りであった。(1)訓練の効果を感じる、(2)訓練の達成感、(3)親としての心境の変化を感じる、(4)家で取り組んでいることがある。一方で小児リハをいつまで続けたらよいかわからない、終了に対しての不安があるとの回答も過半数を超える結果となった。目標において親自身と施設では社会性や自立を望み、小児リハには言語能力の向上が挙げられた。また幼少期から児童期になるとより言語面への期待が大きくなる傾向が見られた。<BR><考察>問題点として依存性を高める原因は、目標を達成しても新たな問題点が見られるため、更なる向上を求めることで生じる過度の期待が考えられる。次に施設への目標と小児リハへの目標が異なるため、小児リハを続けることで言語能力の向上があると考えており、通院することでの安心感を得ていると考えられる。そして訓練の効果を実感しながらも終了すると能力が向上しなくなるとの不安があると考えられる。<BR> 言語聴覚士の役割として、訓練開始当初より訓練期間と目標を明確にしておき、一定期間もしくは目標を達成した時点で、訓練継続の必要性を再検討すること。施設との連携を図り、各施設間の目標の方向性を統一し、可能な限り差をなくすこと。また小児リハで得た基礎的な能力を、生活の中心となる家庭や施設で活用し、環境に適応するようサポートをしていくこと。そのためには、両親が患児を良く理解し親自身が良きパートナーとなるように、訓練を通して自立心を育て、両親の小児リハへの依存性を軽減していく必要があると考えられる。
収録刊行物
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- 日本農村医学会学術総会抄録集
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日本農村医学会学術総会抄録集 55 (0), 353-353, 2006
一般社団法人 日本農村医学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205518023808
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- NII論文ID
- 130006944584
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- ISSN
- 18801730
- 18801749
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可