頚動脈エコーにおけるNASCET法の狭窄率と血流速度の評価
説明
<はじめに> 近年,超音波装置の進歩に伴い頸動脈は超音波での検査に移行してきている。検診などにおいても脳ドックに組み込まれるほど血管病変への関心は高く,年々受診者数が増加している。超音波検査では、IMTやplaque,狭窄率などの評価を行っている。内頸動脈起始部に狭窄性病変があった場合,狭窄率および狭窄部の血流速度を計測する。狭窄部の収縮期最高流速が1.5m/s以上の場合はNASCET法による50から69%の狭窄,2m/s以上の場合は70%以上の狭窄と診断でき,その診断精度はきわめて高いとされている。当院では2004年4月より内頸動脈の狭窄病変に対しNASCET法による狭窄率の測定を行っている。狭窄率と血流速度がどの程度一致するのか検討を行った。<BR><対象> 対象は2004年4月から2006年3月に当院で頸動脈エコー検査を行った1026名中,内頸動脈にplaqueのあった患者224名(男170名,女54名,平均年齢69.3歳)で,NASCET法により狭窄率が計測できた316例について検討した。<BR><使用装置> 東芝製SSA770A,東芝製SSA700Aを使用。<BR>方法</B >NASCET法による狭窄率の測定には,ドップラーを使用して計測。狭窄部の流速は,流速が最大となる部位で測定を行った。<BR><B><結果> 近位内頸頚動脈にplaqueがあってもNASCET法による狭窄率が0%の症例は78例あり血流速度は最高で1m/s,平均で0.6m/s,1から49%の狭窄の症例は194例,最高流速は3m/s,平均0.76m/s,50から69%の狭窄の症例は31例,最高流速は5m/s,平均1.83m/s,70%以上の狭窄の症例は13例,最高流速は5.32m/s,平均2.54m/sであった。0から49%の狭窄で1.5m/sを超えてしまった症例は5例あり狭窄率は35.6_-_46.0%,流速は1.51_-_3m/sであった。50から69%の狭窄率で1.5m/sを超えなかったのは11例,逆に2m/sを超えてしまったものが11例と7割程度が流速と狭窄率が一致しなかった。70%以上の狭窄率では,1例で2m/sを超えなかったものの,ほとんどが2m/sを超えており,逆に高度狭窄例では流速の低下を2例認めた。<BR><考察> NASCET法による50から69%の狭窄率において,狭窄率と流速に良好な結果が得られなかった。これらの画像を再検討したところ,(1)狭窄部の径を過小評価したため流速の加速がないのに狭窄率を過大評価したもの,(2)狭窄部遠位内腔径を過大評価したため流速が加速しているのに狭窄率が低下したものなど,狭窄率の求め方に起因したものが多かった。これらは,計測を始めた当初に顕著に現れていることから,内腔を描出させる技術不足がデータに表れたものと考えられる。しかしながら、内腔の計測誤差が低いと考えられる症例でも狭窄率と流速に一定の関係が得られず,この狭窄率においては流速との関係を述べるのは難しいと考えられる。<BR><結語> 初期は技術不足により計測誤差が生じ,内腔の過小・過大評価をしたため狭窄率と流速に良好な結果が得られなかった。しかし,50_-_69%の狭窄率においては,内腔の計測誤差が低いと考えられる症例でも狭窄率と流速に良好な結果が得られなかったことより,この狭窄率において流速との関係を述べるのは難しいと考えられる。今後,更に症例検討をしていく必要があると考える。
収録刊行物
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- 日本農村医学会学術総会抄録集
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日本農村医学会学術総会抄録集 55 (0), 357-357, 2006
一般社団法人 日本農村医学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205518040192
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- NII論文ID
- 130006944611
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- ISSN
- 18801730
- 18801749
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可