倫理原則に基づく看護場面・生活援助行動・看護の満足度からみた看護者の倫理意識

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説明

<緒言> 看護における倫理には、生命に直結するものから、患者個人の価値観や信念の尊重に関するものなど幅広く、全てにおいて看護者自身の価値観・倫理観が反映される。つまり看護師の倫理意識は看護の質に大きく影響するものになる。しかし看護者が、常に倫理意識を持って日頃の看護実践に取り組んでいるかは不明である。そこで、倫理の6原則に基づいた臨床の看護場面と日頃の生活援助行動、看護の満足度について調査することで、看護者のもつ倫理意識と看護実践の関係を明らかにする。<用語の定義>倫理意識:看護師のもつ倫理に対する考えや認識 満足度:看護のやりがい、楽しさ、継続の意思の度合い<br><研究方法> <br> 対象:調査内容に該当する病棟勤務の看護者 144名<br>期間:平成17年11月17日から24日<br>方法:独自に作成した構成的質問紙による留め置き法<br>調査内容:<br>1)生活援助行動(食事、排泄、清潔、寝具・寝衣、移乗・移動、コミュニケーション、療養環境)に関する肯定的な質問に対する自己の行動を4段階で問い、1-4点に置き換えた。点数が高いほど実践できているとみなす。<br>2)倫理の6原則に基づいた18の臨床場面を提示し、倫理意識と、体験の有無を問う。<br>3) 看護に対するやりがい、楽しさ、継続の意思をVASで問い、最高点を100とした。<br> データ分析:各質問項目についてピアソンの積率相関係数と危険率を求め、P<0.05で有意差ありとした。<bR> 対象者の保護:調査は任意で不参加による不利益がないこと、個人が特定されないように分析すること、調査結果は研究目的以外に使用しないことについて、文書により説明を行い、回答をもって同意とした。<br><結果>  回収率80%、有効回答数104名、有効回答率91%だった。平均年齢は34.4±10.3歳、平均実務経験年数は12.3年だった。生活援助行動の平均は、40点中、「食事」34.5、「排泄」32.8、「清潔」29.5、「寝具・寝衣」32.2、「移乗・移動」34.9、「コミュニケーション」32.6、「療養環境」34.7だった。倫理原則に基づいた臨床場面では、倫理意識は36点中21.5、体験は20.6だった。看護の満足度では、やりがい感は51.4、楽しさは47.7、継続の意思は57.0だった。<br> 年齢と生活援助行動の関係は、「食事」「寝具・寝衣」の項目でP<0.01で、「排泄」「清潔」の項目でP<0.05で、相関と有意差があった。また年齢と倫理意識の関係では負の相関と有意差があった(P<0.05)。満足度では、「やりがい感」「楽しさ」で、50歳代、40歳代が高く、「継続の意思」は40歳代、20歳代が高かった。<br><考察>  倫理意識と生活援助行動との関係では、全てにおいて負の相関があった。提示した看護場面の回答の点数が高いことから、良い看護ケアを実践していると認識する看護師は多いが、倫理的に高い意識を持っているとはいえないことが伺える。<br> 年齢と倫理意識の関係をみると、年齢が高くなるにつれ倫理意識は低下していた。近年資格取得をした看護者は、学生時から看護倫理に関して意識付けられる機会は多い。反面、実務経験年数が長い看護者は、倫理に関する教育背景の不十分さと、看護技術の習得が経験的な体制により行われていた経緯などから、倫理意識が伴いにくかったと考えられる。倫理意識を継続または向上できるように、倫理に関する教育や職場環境を整える必要性が示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205518079488
  • NII論文ID
    130006944672
  • DOI
    10.14879/nnigss.55.0.389.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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