高アミロース米によるメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病への改善効果

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【緒言】<BR>  我々は、これまでに日本人のメタボリックシンドローム、特に高中性脂肪血症発症に高炭水化物食摂取が関与している可能性を報告してきた(Lancet, 2004、J Lipid Res, 2004)。炭水化物の中でも、特に高Glycemic Index(GI)食品は、血糖の急激な上昇とインスリンの分泌を増加させ、肝臓、脂肪組織における脂質新生(de novo lipogenesis)を増加させることから脂質代謝異常、メタボリックシンドローム、2型糖尿病の発症に強く関与していると考えられる。一方、レジスタントスターチ(RS、難消化性デンプン)は、低GI食材であり、食後血糖の上昇を抑制、遅延させることによる糖代謝異常、メタボリックシンドローム、2型糖尿病への予防効果が期待される。我々は、RSであるアミロースを多く含む高アミロース米のメタボリックシンドローム、2型糖尿病に対する予防効果を検討した。<BR> 【方法】<BR> <材料>高アミロース米として「夢十色」、対照米として「コシヒカリ」を用いた。<BR> <単回投与実験>マウス試験では、雄8週齢C57BL/6Jマウスに経口ゾンデにて夢十色食、コシヒカリ食を投与した。0、15、30、45、60、90、120分後に採血した。ヒト試験では、健常なボランティアに、夢十色食、コシヒカリ食をそれぞれ投与し、クロスオーバー試験を行った。食後0、30、60、120分後に採血した。マウス試験、ヒト試験とも、血漿を回収し、食後血糖値と血中インスリン濃度の変化、曲線下面積(AUC)の比較を行なった。<BR> <中期投与実験>マウス試験では、雄8週齢C57BL/6Jマウスに夢十色食、コシヒカリ食を7週間投与した。投与期間中は3-4日おきに、体重、摂餌量を測定した。投与後に16時間絶食させ、麻酔下で採血、解剖を行った。また、解剖したマウスとは、別に7週間投与後のC57BL/6Jマウスに20%ブドウ糖0.4mlを経口ゾンデにて投与し、ブドウ糖負荷試験を行った。<BR> 【結果・考察】<BR>  マウスにおける単回投与実験において、夢十色食群はコシヒカリ群に対して、投与後15分から60分まで血糖値が有意に低値であり、AUCの比較でも、有意に低値であった。血中インスリン濃度では、投与後30分で、夢十色食群が低値であった。ヒト単回投与試験では、夢十色食はコシヒカリ食に比べて、食後30分の血糖値と食後60分の血中インスリン濃度が有意に低値あった。血中インスリン濃度のAUCでも、夢十色食はコシヒカリ食に比べて有意に低値であった。また、ヒト単回投与試験は、1日の午前と午後で行ったため投与時間、さらには投与前のHbA1cにて調整後、一元分散分析を行った。調整後では、夢十色食はコシヒカリ食に比べて、食後30分、60分の血糖値と食後60分の血中インスリン濃度が有意に低値であった。また、血糖値のAUCも有意に低値であった。<BR>  マウスにおける中期投与試験では、体重と摂餌量に有意な差は認められなかったが、7週後のブドウ糖負荷試験において、夢十色食はコシヒカリ食に比べて、食後60分、120分の血糖値、AUCが有意に低値であった。血中インスリン濃度のAUCも有意に低値であった。<BR>  以上の結果から、高アミロース米は、RSであるために小腸で分解と吸収がされにくく、一過性の食後高血糖状態を抑え、中期的には膵臓のβ細胞への負担が少ないことが示唆された。このことは膵臓からのインスリンの過剰分泌を抑え、高インスリン血症、それに続く膵臓の疲弊とインスリン追加分泌障害を予防することが考えられ、耐糖能異常病態の予防・改善効果が期待される。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205518338176
  • NII論文ID
    130006944825
  • DOI
    10.14879/nnigss.56.0.130.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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