当院の院内発生褥瘡と持ち込み褥瘡の比較検討

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抄録

院内発生褥瘡・持ち込み褥瘡<BR> 〈緒言〉当院は、精神、療養病床を含む323床の病院であり、褥瘡に対しては平成8年から委員会を発足し活動を開始した。委員会では、褥瘡発生危険因子の評価、褥瘡に関する学習会を行い褥瘡予防の啓蒙を行っている。また、褥瘡有症者に対しては週に1回の褥瘡回診を行っているが、年間140名ほどの褥瘡有症者がおり、その数は減少していない。当院の褥瘡有症者の特徴や傾向を知るため、褥瘡有症者の評価用紙を用いて過去5年間に院内で発症した褥瘡と入院時既に褥瘡を有していた持ち込みの褥瘡について比較検討した。<BR> 〈方法〉平成15年1月から平成19年12月の期間に入院した褥瘡有症者で褥瘡評価用紙に記入されている全ての患者の年齢、疾患、褥瘡の深さ、褥瘡部位について比較した。<BR> 〈結果〉当院の過去5年間の褥瘡有症者は、計705名で院内発生群が454名(64%)、持ち込み群は251名(36%)であった。平成15年は141名、うち院内発生群が90名、持ち込み群は51名であった。平成16年は褥瘡有症者が146名で、院内発生群が95名、持ち込み群が51名であった。平成17年は、褥瘡有症者が120名で、院内発生群が73名、持ち込み群が47名であった。平成18年は褥瘡有症者が138名で、院内発生群は100名、持ち込み群が38名であった。平成19年は褥瘡有症者が160名で、院内発生群が96名、持ち込み群が64名であった。両群の平均年齢は院内発生群が75.6歳、持ち込み群が77歳で両群に有意差はみられない。 院内発生群は仙骨部が最も多く29.0%で、次いで踵部が17.2%、2箇所以上の複数発生は14.8%となった。褥瘡の深達度はIEATの分類で_I_・_II_度の軽度の褥瘡が88.2%、_III_度以上の重度褥瘡が11.8%であった。基礎疾患は精神疾患が21%と最も多く、骨・関節疾患、感染症の順で多い。 一方、持ち込み群では仙骨部が多く39.0%を占め、次いで2箇所以上の複数発生が33.4%であった。_I_・_II_度の軽度の褥瘡が61.5%で_III_度以上の深い褥瘡が38.5%を占めた。基礎疾患は感染症が最も多く23.8%、精神科疾患19.8%であった。<BR> 〈考察〉院内発生群は、精神疾患患者が最も多く、生活が自立していても精神状態により褥瘡が悪化する傾向があった。ガイドラインと比べ、骨・関節疾患が18.4%と高いのは大腿骨頸部骨折だけを見ても平均年齢83歳と高齢であることが要因の一つである。下肢牽引患者の減圧の対策が必要である。_III_度以上の重度褥瘡の61%が踵部や足趾間に発生しており発見の遅れが重度に至る原因である。また重度褥瘡の24%で不適切なマットを使用しており、適切な体圧分散寝具の使用と足部の減圧が必要である。院内発生群は61%の褥瘡が治癒し、死亡した患者が30%であった。 持ち込み群は、_III_度以上の深い褥瘡が3割を占め複数個所褥瘡が発症している。持ち込み群では、日常生活動作に全介助が必要な患者が76%で、肺炎などの感染症が原因で入院に至っており高齢、ベッド上での生活に加え、発熱など更に褥瘡発生のリスクが高まったと考えられる。次いで精神疾患患者が多く、他院から合併症治療で転院して来る患者が褥瘡を併発している。持ち込み群は、治癒・死亡患者がともに36%であり、褥瘡が治癒しないまま退院となった患者が26%であった。 今後は地域ぐるみで褥瘡予防ができるよう専門性の高い看護師の育成やNSTとの連携で入院後に発症する褥瘡を減少させることが課題である。

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  • CRID
    1390001205518348288
  • NII論文ID
    130006944835
  • DOI
    10.14879/nnigss.57.0.345.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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