敷地内禁煙化を勧めて

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抄録

〈緒言〉 さまざまなメディアを介して、喫煙の有害性が解説され、公共的な施設では禁煙化が推進されている。健康を守るべき病院も当然禁煙にするべきだと考える。しかし病院敷地内を完全禁煙にするのはなかなか難しいのが現実である。 当院は平成14年、新築移転した際には、完全分煙としたものの、喫煙を容認する形をとった。 しかし、禁煙の社会風潮の高まりと平成17年10月、病院機能評価受審をきっかけに、病院敷地内禁煙に踏み切った。当初は、患者さまからの苦情もあり、玄関前や駐車場で喫煙する光景が見られた。 そこで禁煙外来を開設し、地域の学校や会社における「喫煙の有害性」の講演活動を通して、地域住民の意識向上に努めた。 また同時に、当時、当院職員の喫煙率は、12.63%であった。根強い愛煙家がいるため、「病院敷地内禁煙」について、反発があったことも確かである。 病院敷地内禁煙を実施してから2年半が経過した現在、患者さまや職員からの苦情はなくなり、理解を示してくれるようになったのでその過程を報告する。 <方法> 1、 禁煙外来を開設 2、 地域の学校や会社で講演活動実施 3、 職員による吸殻拾いを実施 4、 入院予定の患者オリエンテーション時に、外来にて敷地内禁煙の説明を行い、入院後さらに、病棟で、説明を行う。どうしても禁煙できない患者さまには、禁煙外来の受診を薦める。 5、 喫煙している患者さまを見かけたら、その都度注意し、病棟師長が現場を確認し、注意を促す。 6、 禁煙支援委員会を発足させ、敷地内禁煙の推進について討議 <結果> 禁煙外来の実績は、平成17年12月から平成20年3月まで119名が受診して挑戦した結果、92名が禁煙できた。禁煙成功率(不明者を除く)は82.1%であった。 平成17年 受診者 5名 成功者 4名< BR> 平成18年     75名    62名< BR> 平成19年      39名     26名 「病院敷地内禁煙」にしたことが禁煙のきっかけになったということは、たいへんうれしいことである。 院長自ら、地元高校1年生を対象に、「喫煙の影響と禁煙のすすめ」、市民健康講座において、「続けていいですか?そのタバコ」、地元企業の産業医活動で、「あなたにもできる禁煙」というタイトルで講演を実施した。講演会や禁煙外来において、禁煙を推し進めるにあたり、もともと院長は、喫煙歴が長い愛煙家であり、病院方針を打ち出すために、完全禁煙をした実体験があり、愛煙家にとって、説得力のあるものとなった。 <結論> 喫煙は個人の嗜好とは言え、受動喫煙の有害性もあり、健康維持・回復を願う病院が喫煙を容認することは避けたいものである。 病院敷地内禁煙の推進は、常に現在進行形である。今後も、地域住民の健康管理のために、貢献していきたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205518373632
  • NII論文ID
    130006944865
  • DOI
    10.14879/nnigss.57.0.374.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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