病棟看護師の介護保険に関する知識と退院調整の現状調査

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抄録

<緒言>診療報酬の改訂により在院日数が短縮されている。そのため、看護師は、患者の家族や医療・福祉に関わる人々と連携をとり、退院後の療養生活を準備するという退院調整が重要な役割となっている。<br> 特に介護保険制度の対象者が入院した場合は、入院当初から、退院調整を開始しないと対象者の退院後の生活に支障きたすことになる。しかし、介護保険対象者は高齢者が多いため、必要な情報を収集するには、対象者のキーパーソンの特定が大切となる。また、調整の実際では、介護保険に関する知識を看護師がどの程度持ち合わせているかが、積極的な早期退院調整の鍵であるともいえる。<br> そこで、病棟看護師の介護保険に関する知識と退院調整の現状を調査し、問題点を明確にした。<BR><方法><br>1.研究対象:病棟に勤務する看護師・助産師17名。倫理的配慮として、調査用紙書面にて目的を説明し、回答があった者を承諾が得られたとした。<br>2.研究期間:平成17年9月から11月<BR>3.調査方法および内容<br>1) 介護保険に関する知識調査は、自記式選択法で20問作成。<br>2) 退院調整の情報収集に関する質問は、「患者と家族に退院後の療養について」「病室で面会者がいたときの行動」「主治医に今後の方針の確認」を『していない』『あまりしていない』『時々している』『常にしている』の選択肢法の評定法で回答。「退院調整で困ったこと」「連携を必要とする職種」「希望する学習会」について、複数選択法で回答。<br>4.分析方法:統計ソフトSPSS10.0jfor Windowsを使用した。退院調整の現状調査で卒後経験年数は、1群:1-4年目、2群:5-9年目、3群10-25年目に分け、一元配置分析を行なった。<BR><結果>介護保険制度に関する知識(100点満点中平均点)は、介護保険に関して65点、施設に関して41点、訪問看護に関して82点であり、施設に関する知識が低かった。<br> 退院調整の現状調査では、情報収集に関する質問において、卒後経験年数の1群と3群と比較して、有意に高かった(p>0.05)。つまり、経験年数が少ない看護師は、面会者に対して患者との関係を確認することや家族へ退院後の療養希望を聴くこと、医師に今後の方針を確認することは、なかなかできないという結果がでた。<br> 今回の調査の結果、介護施設への知識不足と退院調整力には、看護師の力量の差があることが明らかとなった。しかし、病棟で勤務する看護師の経験は様々である。それぞれが一生懸命看護に取り組んで入るものの、内容に差が出ることもある。従って、退院調整のように高度な力量を必要とされる看護は、入院時より上席にあるものを指導者として、受け持ち看護師とともに関わることが大切である。看護の質を保証するためにも、看護師の関わりが標準化されることも必要である。<br> 今後は、退院調整や地域資源についての学習会を開催して、介護保険制度に関する知識を高めていきたい。また、退院調整を入院時からシステム化できるよう、記録の改善も課題となる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205518393728
  • NII論文ID
    130006944886
  • DOI
    10.14879/nnigss.55.0.173.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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