踏切事故による頭部外傷患者の看護を振り返って

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  • 長期間続いたせん妄状態への対策

抄録

<はじめに> せん妄は意識障害のひとつであり、幻覚、妄想、不安、興奮などの精神症状や異常行動を起こす。今回、頭部外傷で意識障害(せん妄)をきたした患者とのかかわりを通して、様々な対策を実施し、患者を無事自宅へと促すことが出来たので報告する。<BR><症例紹介><BR> 患者:50代女性。診断名:多発外傷_丸1_重症頭部外傷_丸2_肋骨骨折血胸。入院期間:平成17年3月上旬_から_6月中旬。家族構成:夫、子供2人(高校生、中学生)の4人家族。現病歴:平成17年3月 車と電車の衝突事故で入院。入院4日目 血胸のため転院、胸腔ドレナージ治療にて症状改善。同年3月中旬 当病棟再入院(遷延性意識障害治療目的)<BR><入院後の経過・看護介入><BR> _丸1_せん妄期:JCSI-3、左片麻痺。入院2週目頃より独語出現し、体動活発。抑制を外し、柵も乗り越え、全裸になるなどで日中は看護室で過ごした。家族の面会はほとんどない。転倒転落のリスクを考え、低ベッド、4点柵、セーフティーコール、四肢抑制、車椅子乗車時のシートベルトの使用で、事故なく経過。しかし、患者の大声には解決策がないまま見守るしかなかった。<BR> _丸2_睡眠療法期(睡眠期):主治医より家族へ睡眠療法の提案があり、家族の同意を得て睡眠療法開始するも、効果は薄く、胃管自己抜去頻回。身体損傷リスク、薬物による悪性症状の出現、廃用症候群を考え、せん妄期同様の抑制、体位変換、口腔ケア、経腸栄養管理を行なった。転倒転落、褥瘡形成なく経過した。しかし、薬剤性肝機能障害を起こして睡眠療法は中止となった。<BR> _丸3_覚醒期:感情失禁が悪化し、他患者からの苦情もあり、個室へ移動した。転倒転落のリスクはあったが、ベッドの使用、抑制はせず、マットとセーフティーコールで対応した。また、夫に付き添いを促し、徐々に夫の面会も増え、せん妄状態が軽減した。身体可動性の障害、セルフケア不足によるADLの向上にも努めた。その結果、トイレで排泄可能になり、転倒転落なく経過し、自宅退院となった。<BR><考察> 当病棟では、毎週抑制カンファレンスを実施している。カンファレンスで、抑制によって症状が悪化しているのでは、という意見もあったが、どの時期においても抑制は必要不可欠であり、解除することはできなかった。そのため、抑制の方法を検討し、せん妄期、睡眠療法期では、安全を第一に、覚醒期では、ADLの自立を考慮した。結果、身体損傷を回避することができた。このように、抑制カンファレンスを毎週実施し、患者の段階にあった身体拘束を行い、ケアしたことで自己損傷が回避できたと考える。また、家族からの相談や不満に対し、医師や師長から現在の治療法、今後の方針など、その都度説明することで家族の理解を得た。また、感情失禁が家族の面会で緩和すると、家族も含めたかかわりの必要性についての説明もした。せん妄状態の患者家族に対して、医療者と家族との綿密な連携が必要なことがわかった。主治医から看護スタッフへ、患者の現状、治療、今後の経過について、段階を追うごとに説明があったことで、状態を少しずつ理解できていき、将来の患者像を考えられるようになり、余裕をもって患者を看ることができた。<BR><まとめ> 今回、意識障害をきたした患者の看護を3つの時期に分け、振り返り、自己損傷のリスク、看護、対応について学べ、せん妄はある時期がくれば沈静化するということも理解できた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205518440960
  • NII論文ID
    130006944945
  • DOI
    10.14879/nnigss.55.0.153.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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