潜在的ジレンマの可視化、倫理的意思決定、そしてグッドプラクティスへ

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抄録

1.医療現場の身体拘束の現状<br><生きる援助として><br>・急性期における治療上の行為としての身体拘束→健康の回復<br>・慢性期における医療事故防止としての身体拘束→疾病(傷害)の予防<br><身体拘束に伴うリスク><br>(1)人権尊重の視点<br> 尊厳を保つ権利、敬意のこもった看護を受ける権利、平等な看護を受ける権利、自己決定の権利<br>(2)人間の生命<br> 身体拘束による精神的・肉体的ダメージ<br><医療現場におけるリスク><br> 多重課題、高齢者増、一般病棟のICU化、死にゆく人々への終末期医療<br>2.身体拘束と倫理原則<br>◆倫理とは…<br>・“何をすべきか”ということ<br>・何を行うことが正しいか、間違っているか、人間の行動で何が善で何が悪かを検討すること<br>◆倫理的探求とは…<br>・人間の行いの道徳的側面を理解し、人間にとっての福祉に関する重要な疑問への答えを形成することに役立つこと。(T.Fry,1994)倫理の原則(T.Fry,1987)<br>・善行→善を行い害を避ける<br>・正義→社会における負担と利益をいかに平等・公平に行うかということ<br>・自律→個人自ら選択した計画にそって自分自身の行動を決定する個人的な自由を許されるべきであること<br>・誠実→真実を告げる、他をだまさない義務<br>・忠誠→人の専心したことに対して誠実でありつづける義務<br>*倫理的ジレンマ*<br>「同じぐらい望ましい選択肢(価値)あるいは望ましくない選択肢(価値)の間でどちらかを選択しなければならない状況のこと」 (ベンジャミン&カーティス、1995)<br>◆身体拘束における倫理的ジレンマ<br>・患者や家族の同意プロセス、身体拘束による人権問題・肉体的問題、身体拘束に関するチーム医療における取り組みの温度差<br>◆身体拘束における倫理的ジレンマを可視化することの重要性<br>・問題は何か、その背後要因は何か、関わる関係者は誰か<br>3.倫理問題分析モデル <A.Davis、1997><br>1.何がおこっているのかを明らかにする<br>2.患者に関する関連事項を明らかにする<br>3.その状況に関わっている人、あるいは意思決定に影響を受ける人々を明らかにする<bR>4.関連する法的な情報を明らかにする<br>5.問題となっている倫理問題を含む現象の価値は何かを明らかにする<br>6.可能性として考えられる選択肢とその意図、または結果として起こってくるであろうと考えられることを明らかにする<br>7.法律・経済性などの実際的な制約を明らかにする<br>8.倫理的に裏付けできるいくつかの行動を列挙する<br>9.自分の倫理的立場に基づいて行動をおこす<br>10.とった行動の振り返りと評価をし、今後に生かす<br>4.グッドプラクティスへ<br>◆ベストプラクティスは困難な現実<br>★倫理的問題を言語化すること<br>★倫理的意思決定プロセスを共有すること<br> 限られた資源、環境の中で関わる関係者で検討し続けること。<br>= 患者・家族への配慮 =<br>「責任」を担うということ<br> 責任→Responsibility(応答すること)<br>    「応答を期待しにくい時でも、呼びかける努力をやめず、応えきれないと感じても、応えようとする姿勢を崩さないこと」<br>〔大場健:「責任」ってなに?、講談社現代新書〕

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205518808960
  • NII論文ID
    130004649231
  • DOI
    10.14879/nnigss.55.0.27.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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