骨盤臓器脱に対するTVM手術の導入

説明

急速に進む高齢化社会と医学の進歩により患者の視点に立ったQOL(Quality of Life:生活の質)の改善があらゆる分野において求められている。加齢や過去の分娩が要因の一つといわれる骨盤臓器脱や尿失禁によって仕事・家事・外出などに不自由を強いられ、ひそかに悩み苦しんでいる女性は少なくない。<BR> 子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱に対しては保存的治療として従来よりリングペッサリーの膣内挿入が挙げられるが出血・帯下増加などの膣炎の発生や患者にとっても先の見えない外来通院など問題点も多い。また手術治療としては一般的に膣式子宮全摘+膣壁形成術または膣閉鎖術などが行われていたが、患者の多くは合併症を多く持つリスクの高い高齢者であること、再発率などの点から敬遠されることも少なからずあった。<BR> 2004年にフランスで考案されたTVM(tension-free vaginal mesh)手術とはポリプロピレンメッシュを使用した骨盤底を再建する新しい手術方法である。低侵襲かつ低い再発率といった根治性の高い手術として現在では世界中で普及しており、ウロギネコロジー(女性泌尿器科)という新たな分野も確立されている。<BR> 日本でも2010年4月より診療報酬が改訂され、泌尿器科医、婦人科医によって取り入れる施設が徐々に増えてきているが、ブラインド操作の多い術式の技術習得の難しさや合併症対策など歴史が浅いゆえの問題点も多い。<BR> 当院では国内の専門施設で手術トレーニングを積み、2009年よりTVM手術を導入している。子宮を摘出せず短い入院期間で治療を受けた患者の満足度は高く、現在まで再発例や重篤な合併症なども認めていない。TVM手術を導入するまでの道のりと当院での手術成績、合併症などを報告する。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205519204736
  • NII論文ID
    130006945684
  • DOI
    10.14879/nnigss.60.0.118.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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