Clostridium Difficile Toxin陽性の要因を検討

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  • -栄養管理法をふまえて-

抄録

<目的>Clostridium Difficile (以下CD)は入院患者に最も多くみられる下痢症の原因菌であり、生育に不利な環境下では芽胞を形成することにより長期間生存し、また各種消毒薬に抵抗性を示す常在菌である。腸管を守っている正常細菌叢のバランスが抗生物質の使用により崩壊され、本菌が過剰に増殖、毒素を産生することはすでに指摘されている。しかし、抗生物質の使用以外に宿主側の要因もあるとされており、今回栄養管理法をふまえてCD Toxin陽性における他の要因の検索を行なった。<br><方法>2004年4月以降で入院後下痢を認め、Oxoid社のCD toxin A検出キット「ユニクイック」を用いてCD検査を行った連続100例のうち、入院時よりCD Toxin陽性であった4例を除く96例(陽性症例45例、陰性症例51例)において、retrospectiveに検討した(年齢、性別、抗生物質の使用有無に有意差なし)。今回、CD Toxin陽性に影響を及ぼすと考えられる因子として、CD検査前までの1)抗生物質の使用期間、2)栄養状態(TP、Alb、Ch-E、TLC)、3)絶食期間、4)食物繊維の摂取有無、5)経腸チューブの挿入有無の5項目を用いた。<br><結果>抗生物質の使用期間は、CD Toxin陽性群(以下CD(+)):14.3±17.1日、CD Toxin陰性群(以下CD(-)):10.7±10.0日、p=0.485。TPは、CD(+):5.9±1.0g/dl、CD(-):5.9±0.9 g/dl、p=0.915。Albは、CD(+):2.8±0.5 g/dl、CD(-):2.8±0.5 g/dl、p=0.849。Ch-EはCD(+):0.4±0.2?ph、CD(-):0.5±0.2?ph、p=0.641。TLC(末梢血総リンパ球数)は、CD(+):838.4±451.4/μL、CD(-):1030.9±558.0/μL、p=0.125。絶食期間は、CD(+):6.3±8.7日、CD(-):2.2±4.3日、p=0.017。食物繊維の摂取ありは、CD(+):20例、CD(-):33例、食物繊維の摂取なしは、CD(+):25例、CD(-):18例、p=0.048。経腸チューブありは、CD(+):15例、CD(-):8例、経腸チューブなしは、CD(+):30例、CD(-):43例、p=0.047。よって、CD Toxin陽性は、絶食期間の長い症例、食物繊維を摂取しない症例、経腸チューブを挿入した症例で有意に多かった。多変量logistic回帰分析の結果、絶食期間が長くなるほど、他の因子とは独立してCD Toxin陽性が有意に高くなることが示された(オッズ比1.098、95%信頼区間1.001-1.204,p=0.047)。<br><考察及び結論>栄養管理法をふまえて検討を行った結果、CD Toxin陽性の要因には、絶食期間の長さが関係した。<br> したがって、絶食の長期化による腸粘膜の萎縮により、1.元々腸管内に少量存在していた菌が増殖、毒素を産生した可能性と、2.体外の菌に暴露され、腸管内に定着、増殖した可能性が示唆される。<br> また、その他の要因(食物繊維、経腸チューブ)も考慮し、今後は絶食期間の短縮、食物繊維含有製剤の使用、経腸栄養バッグ製剤の使用を検討していきたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205519891072
  • NII論文ID
    130006946280
  • DOI
    10.14879/nnigss.55.0.106.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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