新規チタン製バリアメンブレンの各種培養細胞への効果

DOI
  • 遠藤 直樹
    東北大学病院総合歯科診療部
  • 小林 洋子
    東北大学大学院歯学研究科 口腔修復学講座 歯科保存学分野
  • 石幡 浩志
    東北大学大学院歯学研究科 口腔生物学講座 歯内歯周治療学分野
  • 岩間 張良
    東北大学大学院歯学研究科 口腔生物学講座 歯内歯周治療学分野
  • 菊池 雅彦
    東北大学病院総合歯科診療部

書誌事項

タイトル別名
  • The Effect of a Novel Titanium Barrier Membrane on Cell Growth and Differentiation

この論文をさがす

抄録

 目的 : 現在, 歯科疾患の主要なものとして, 齲蝕と歯周病が挙げられる. 歯周病は成人の約8割が罹患し, 40歳以上では歯を失う最大の要因である. 一方, 失われた歯周組織の再生を目指すため, 喪失以前に健康な組織があったスペースを確保したうえで再構築を誘導する歯周組織誘導再生療法「バリアメンブレン法」が開発された. バリアメンブレン法は, 復元する歯根膜や歯槽骨から, バリアメンブレンを用いて確保した空間に再生組織が誘導され構築するのを待つ治療法である. このバリアメンブレンには, 生体親和性に加え, スペースメイキングに必要な強度が求められる. そのため従来のポリマー製メンブレンは200μmの厚さを有し, その多孔質空洞に多量の細菌が侵入することで感染を引き起こす欠点を有していた. そこで, 細胞に積極的に働きかけて増殖・分化を誘導するのみならず, 細菌感染リスクをも低減させるような新たなバリアメンブレンの開発を着想した. 本研究ではこのバリアメンブレンを用い, 培養細胞の増殖・分化誘導能を従来のメンブレンと比較・検討した. <br> 材料と方法 : マウス頭蓋冠より分離樹立された骨芽細胞様細胞株 (MC3T3-E1) あるいはヒト歯根膜由来細胞を通法に従い培養し, 3~5代継代したものを実験に用いた. また, チタンに20μmの貫通孔を50μm間隔で形成したものを新規チタン製バリアメンブレンとした. 比較対象としてFRIOS BoneShield rectangular (以下, FRIOS) を用いた. 今回, それぞれの試料上に細胞を播種し, 蛍光染色法によるオステオポンチン (OPN) 陽性細胞の観察, 細胞増殖の計測, 走査電子顕微鏡 (SEM) 観察を行った. <br> 結果 : 蛍光染色法によって, 新規チタン製バリアメンブレンでOPN抗体に陽性の細胞が多数観察された. また, 新規チタン製バリアメンブレンはFRIOSと比較して細胞増殖が有意に亢進していた. 試作チタンメッシュのSEM観察においては, 培養1週間後で貫通孔をつなぐように細胞が連結している様子が観察された. <br> 結論 : 今回用いた50μmの間隔で20μmの貫通孔が形成された厚さ20μmの新規チタン製バリアメンブレンは, 細胞分化の指標となるOPNの発現が確認でき, また, その細胞増殖能から, 従来のFRIOSより細胞増殖・分化誘導能において優れているものと考えられた. 今後はさらに, 生体内における新規チタン製バリアメンブレンの効果および強度について検討することが必要であると思われる.

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ