フッ化ジアミンシリケートの象牙質知覚過敏症治療剤への応用 : 抜去歯を用いた象牙細管封鎖能の検討

  • 菅 俊行
    徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部発達予防医歯学部門健康長寿歯科学講座歯科保存学分野
  • 石川 邦夫
    九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座生体材料工学
  • 松尾 敬志
    徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部発達予防医歯学部門健康長寿歯科学講座歯科保存学分野
  • 恵比須 繁之
    大阪大学大学院歯学研究科口腔分子感染制御学講座(歯科保存学教室)

書誌事項

タイトル別名
  • Application of Ammonium Hexafluorosilicate for the Treatment of Dentin Hypersensitivity : Evaluation of Occluding Ability of Dentin Tubules Using Human Extracted Teeth

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説明

フッ化ジアンミン銀(サホライド®)は,齲蝕進行抑制剤および象牙質知覚過敏症治療剤として臨床で使用されている.しかしながら,フッ化ジアンミン銀は塗布後に銀の沈着による歯の黒変が起こる.したがって,フッ化ジアンミン銀は主に乳歯に使用されている.この欠点を改良するために,フッ化ジアミンシリケートを調製した.銀の代わりにシリカを導入した理由は,シリカは歯質の変色を起こさないこと,そして擬似体液からアパタイトの生成を誘導するからである.本研究の目的はヒト口腔内を模倣した環境下において,フッ化ジアミンシリケート処理後の象牙細管封鎖効果と持続性を評価することである.フッ化ジアミンシリケートの象牙細管封鎖効果は,ヒト抜去歯を用いて評価を行った.フッ化ジアミンシリケート処理直後および人工唾液浸漬7日後の象牙質プレートの表面を,走査電子顕微鏡(SEM)にて観察を行った.SEM観察の結果,開口象牙細管はフッ化ジアミンシリケート処理直後にはシリカ-リン酸カルシウム結晶により完全に封鎖されていた.さらに,人工唾液浸漬7日後には象牙質表面は新たに生成した結晶により覆われていた.EDXA分析によると,フッ化ジアミンシリケート処理直後に象牙細管内に析出した結晶はシリカ,カルシウム,リンを含有しており,シリカ-リン酸カルシウム結晶であることが明らかとなった.その結晶のカルシウムとリンのモル比はフッ化ジアミンシリケート処理直後には2.02であったが,人工唾液浸漬後には徐々に減少した.一方,象牙質表面に新たに生成した結晶は実験期間を通して,ほぼ一定の値(Ca/P=1.16〜1.28)であった.周囲の管間象牙質と比べて有意に低い値であることから,おそらくカルシウム欠損アパタイトが析出していると推察された.フッ化ジアミンシリケート処理は人工唾液中からリン酸カルシウムの析出を誘導し,したがって,ヒト口腔内を模倣した環境下において,持続的な象牙細管封鎖能を有することが明らかとなった.

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