ホルマリン・グアヤコール(FG)根管貼薬時に蒸散するホルムアルデヒドに関する研究

  • 井川 資英
    東北大学大学院歯学研究科口腔生物学講座歯内歯周治療学分野
  • 進藤 拓
    東北大学環境保全センター
  • 井川 恭子
    東北大学大学院歯学研究科口腔保健発育学講座予防歯科学分野
  • 島内 英俊
    東北大学大学院歯学研究科口腔生物学講座歯内歯周治療学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Vaporization of Formaldehyde from Root Canal Dressing using Formalin Guaiacol(FG)

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抄録

本研究の目的は,根管貼薬の際にホルマリン・グアヤコール(FG)貼薬綿栓から蒸散するホルムアルデヒド濃度に関する知見を得ることである.濃度測定は東北大学病院附属歯科医療センター歯内療法科において,平成20年の夏と冬の2つの期間,診療終了後の夕刻に行った.あらかじめ髄腔開拡および根管拡大を行ったヒト抜去歯を,ユーティリティワックスで診療ユニットのヘッドレストに固定した.抜去歯から約20cm離れた位置にガス捕集管の吸引口先端を配し,10分間合計2lの空気の採取を行い,その後高速液体クロマトグラフィーを用いて試料中のホルムアルデヒド濃度を測定した(夏冬それぞれn=5).空気の採取は,1)FGをしみ込ませた貼薬綿栓を根管に挿入し,局所排気を全く行わずに放置し周囲の空気を10分間捕集(条件1),2)FGをしみ込ませた貼薬綿栓を根管に挿入し,ユニット付属の吸引装置とバキュームチップを使用して周囲の空気を10分間捕集(条件2),3)FGをしみ込ませた貼薬綿栓を根管に挿入し,口腔外大容量吸引装置(Denpax®NDP-510,デンパックス)を使用しながら周囲の空気を10分間捕集(条件3),4)FGをしみ込ませた貼薬綿栓を根管には挿入せずにヘッドレスト上に10分間放置し,局所排気は行わず周囲の空気を10分間捕集(条件4)のいずれかの条件下で行った.また,いずれの条件においても操作を行う直前に周囲の空気を10分間採取し,バックグラウンド(BG)濃度として用いた.得られた結果は以下のとおりであった.1)BG濃度および各条件下でのホルムアルデヒド濃度は,労働安全衛生法特定化学物質障害予防規則で定めている管理濃度以下の値であった.2)夏季および冬季のそれぞれの条件1〜4におけるBG濃度の間に統計学的な有意差はなかったが,夏期のBG濃度は冬期に比べて有意に高い値を示した(p<0.01).3)夏冬ともに,条件4での平均濃度は0.03〜0.04ppm程度で,条件1〜3によって空気中に蒸散したホルムアルデヒド濃度の平均値(0.002ppm以下)に比べて有意に高い値であった.得られた結果から,根管貼薬の際に蒸散するホルムアルデヒド濃度に関する安全性を確認するとともに,ユニット付属の吸引装置等を用いた局所排気は,周囲空気中のホルムアルデヒド濃度の低減化に有効であることが示された.

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参考文献 (17)*注記

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