半月状歯肉弁歯冠側移動術後治癒の組織学的評価

  • 半田 良平
    北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座歯周・歯内療法学教室
  • 齋藤 彰
    北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座歯周・歯内療法学教室
  • 齋藤 恵美子
    北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座歯周・歯内療法学教室
  • 本間 義幸
    北海道大学大学院歯学研究科学術支援部
  • 川浪 雅光
    北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座歯周・歯内療法学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Histological Evaluation of Periodontal Healing after Semilunar Coronally Positioned Flap Procedure

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説明

本研究の目的は,ビーグル犬に実験的に作製した歯肉退縮に対して半月状歯肉弁歯冠側移動術を行い,術後の治癒過程における,根面と歯肉弁の付着の様相を組織学的に観察することである.実験動物にはビーグル犬8頭を用い,合計40本の前歯を実験歯とした.実験に先立ち,上下顎前歯部に歯肉退縮モデルを作製した.前歯部唇側歯肉を部分層弁で剥離し,実験歯の唇側根面がCEJから4mmまでの深さで,幅は近心隅角から遠心隅角まで露出するように歯槽骨を除去した.剥離した歯肉弁の辺縁を一部切除,整形し,歯肉弁を根尖側に置いて縫合した.4週後にTarnowの方法に準じて半月状歯肉弁歯冠側移動術を行った.メスで実験歯の唇側歯肉に半月状の切開と歯肉溝切開を入れ,可動性のある半月状の部分層弁を作製した.弁を歯冠側へ移動し,辺縁をCEJの位置に置き,生理食塩水で湿らせた滅菌ガーゼを用いて圧迫した.観察期間は0,1,2,4週後とし,臨床的観察,組織学的観察および計測を行った.臨床的観察では,0,1,2,4週群ともに良好な根面被覆が得られた.組織学的観察および計測では,0週は弁と根面間は血餠で満たされていた.0〜1週にかけて上皮のダウングロースが進行し,1週群では長い上皮性付着が観察されたが,それ以降有意な増加はなく,4週ではルートプレーニング根面の73.3±29.1%が上皮と付着もしくは隣接していた.結合組織が接する長さは0〜4週で有意な変化はなく,19.8±25.2%であった.歯根吸収は術後1〜2週でわずかにみられ,その後減少した.新生セメント質の形成は,術後4週からルートプレーニング面の根尖側に6.9±11.1%認められた.以上の結果より,半月状歯肉弁歯冠側移動術後の根面と歯肉弁との付着は,上皮性付着が主体であり,術後1週以内に成立し,その根尖部にわずかにセメント質形成が2〜4週で生じる可能性が示唆された.

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参考文献 (28)*注記

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