腕神経叢浸潤による神経障害性疼痛に対し,プレガバリンを含む薬物療法と放射線療法で著効がえられた食道癌の1例

DOI

抄録

【症例】60歳台,男性。進行食道癌に対し5-FU+CDDP療法1コース施行後,外来通院中に右肩甲骨から右上腕にかけて疼痛としびれが出現した。MRIで第1胸椎に骨転移およびリンパ節転移がみられたため,骨転移による疼痛と腕神経叢浸潤による神経障害性疼痛と診断した。骨転移巣とリンパ節転移巣を含んだ照射野に対して,6MV X線を前後二門,1回2.5Gyで計15回,総線量37.5Gyとした放射線療法と,ロルノキシカムとオキシコドン徐放製剤による薬物療法を開始した。しかし夜間の突出痛が特に著明でnumerical rating scaleは9~10/10であった。鎮痛補助薬としてプレガバリン75mg/日の投与を開始し,徐々に増量して300mg/日としたところ,夜間の突出痛は全くみられなくなり,患者は疼痛なく5-FU+CDDP療法2コース目をうけることができた。【考察】薬物療法に用いたプレガバリンは 2010年10月より末梢性神経障害性疼痛に対し適応となった薬剤で,作用機序は電位依存性CaチャネルであるCavα2-δのリガンドとして作用し,Caチャネルを介したカルシウムの流入を抑制して神経伝達物質の放出を抑制する。緩和医療領域では鎮痛補助薬として普及しつつある。放射線療法に関してはリンパ節に対する治療も兼ね,1回2.5Gyを計15回とした。放射線照射の効果は通常4~6週で安定するとされ,われわれの経験でも約3週前後で出現することが多いが,症例によっては数日で疼痛が改善することもある。自験例ではオキシコドン内服と放射線照射を行いながら,プレガバリンを増量し数日で疼痛が改善した。前2者の効果も考えられるが,プレガバリンの効果発現の速さが著効をもたらした一因であろう。【結語】プレガバリンは神経障害性疼痛に対する薬物療法での有効な選択肢のひとつである。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205522574080
  • NII論文ID
    130006947378
  • DOI
    10.14879/nnigss.60.0.342.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ