全身的な配慮が必要な患者へ漢方薬を応用して外科処置を行った3症例

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  • Application of Kampo Medicine to the Surgical Treatment of Generally Compromised Patients: A Case Series Report

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抄録

<p> 目的 : 抗菌薬アレルギー, 喘息の既往, 糖尿病などの患者に, 特に外科処置を行う際には全身的な配慮が必要である. 今回, 上記患者に漢方薬 (排膿散及湯, 立効散) を応用して外科治療を行い良好な結果を得たので報告する.</p><p> 症例1 : 48歳女性. 上顎左側側切歯歯肉腫脹の繰り返しを主訴に来院. 既往歴 : 抗菌薬アレルギーと小児喘息の既往. 現症 : 上顎左側側切歯根尖相当部歯肉に境界明瞭な小豆大の腫脹を認めた. 治療経過 : デンタルエックス線画像ならびに3DX画像にて根尖周囲にエックス線透過像を認め, 慢性化膿性根尖性歯周炎の診断の下, 感染根管治療を行った. 根管充塡後, 術前から術後にかけて排膿散及湯を服用させ, 歯根端切除を行った. 鎮痛剤として立効散を処方した. 抗菌薬を使用しなかったが術後の強い炎症や疼痛の発現はなく, 6カ月経過後根尖部エックス線透過像の減少を認め, 順調に推移している.</p><p> 症例2 : 28歳女性. 上顎右側中切歯歯肉腫脹の繰り返しを主訴に来院. 既往歴 : 親族に抗菌薬アレルギー. 患者は授乳期間中であった. 現症 : 上顎右側中切歯根尖相当部歯肉に境界明瞭な小豆大の腫脹を認めた. 治療経過 : 慢性化膿性根尖性歯周炎の診断の下, 感染根管治療を行った. 根管充塡後, 術前から術後に排膿散及湯を服用させ, 膿瘍切開・根尖搔爬を行った. 鎮痛剤として立効散を処方. 抗菌薬を使用しなかったが, 術後の強い炎症や疼痛の発現はなかった. 術後3カ月臨床的に良好な推移で, エックス線診断でも根尖周囲の透過像が減少している.</p><p> 症例3 : 52歳男性. 歯肉腫脹とブラッシング時の出血を主訴に来院. 既往歴 : Ⅱ型糖尿病 (HbA1c=6.5%) と小児喘息. 現症 : 全顎的に歯肉腫脹, プロービング深さはほとんどの歯で4mm以上あった. 全歯でプロービング時の出血を認め, 一部では排膿も認めた. 治療経過 : 中等度慢性歯周炎と診断し, 歯周基本治療を行った. 基本治療後の精密検査で5mm以上の歯周ポケット残存歯に, 歯肉剝離搔爬手術を行った. 術前より術後にかけて排膿散及湯を服用させ, 鎮痛剤として立効散を処方した. 抗菌薬を使用しなかったが術後に強い炎症はなく, その後プロービング深さはすべて3mm以下に減少した.</p><p> 結論 : 今回, 抗菌薬アレルギー・授乳中・糖尿病など全身状態に配慮が必要な患者に外科処置を行ったが, 排膿散及湯・立効散は感染予防, 疼痛軽減に有効であると考えられた.</p>

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