脳卒中患者のトイレ動作とBerg Balance Scaleとの関係

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抄録

【はじめに】トイレ動作は、車椅子と便座間の移乗、ズボンの上げ下げなど姿勢の変化が見られる動作となり、立位でのバランス能力が必要になると考えられる。脳卒中患者の歩行とバランスとの関係についての報告は多いが、その他のADL評価とバランスとの関係についての報告は少ない。そこで今回、トイレ動作に注目し、バランス評価であるBerg Balance Scale(以下BBS)との関連性について検討した。<BR>【対象】平成17年4月から平成18年11月までに当院に入院した脳卒中患者で、病棟内で車椅子駆動が自立している32例を対象とした。内訳は、性別が男性18例、女性14例、病型が脳梗塞17例、脳出血13例、くも膜下出血2例、麻痺側は右片麻痺18例、左片麻痺11例、両片麻痺3例、発症からの日数は平均174.7±89.9日であった。<BR>【方法】FIMを使用して、セルフケアおよび移乗におけるトイレの項目がともに6点以上を自立群19例、それ以外を非自立群13例の2群に分けた。トイレ動作は、当院の車椅子用トイレを使用しての評価で統一した。検討項目としてBBSの14項目の各得点、及び合計点を調査し、2群間で比較検討した。なお統計処理は、Mann Whitney検定を使用し、有意水準を5%未満とした。<BR>【結果】2群間を比較し、高い相関が認められた項目は、「立位バランス、閉眼での立位バランス、閉脚での立位バランス、立位でのリーチ、後ろへの肩越しの振り向き」、及びBBSの合計点であった(p<0.01)。また、相関が認められた項目としては、「椅子からの立ち上がり、立位から椅子への腰掛け、床からの拾い上げ、一回転」であった(p<0.05)。それら以外の項目については、差は認められなかった。<BR>【考察】今回の研究では、ADLが車椅子レベルの脳卒中患者を対象とし検討した。結果からBBSの9項目、また合計点において相関が認められ、トイレ動作が自立するためには静的・動的な立位バランスが必要になることが示唆された。しかし、「踏み台への足のせ」などの5項目においては、差は認められなかった。BBSは歩行の評価として使用されているが、トイレ動作のような両脚支持での動作においては、差が認められない項目もあると考えられた。そのため、トイレ動作においてBBSの項目全てに関連性があるとは言えないが、今回相関が認められた9項目に関しては高い関連性があると考えられた。今後は、トイレ動作に重要となる項目を明確にし、BBSだけではなく身体機能などの関連性も踏まえた検討をしていきたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205523409024
  • NII論文ID
    130006947857
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.26.0.56.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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