首下がりの頚部ジストニアを呈した多系統萎縮症一症例の経時的変化

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  • ―運動療法が身体機能に及ぼす影響―

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【はじめに】第39回日本理学療法学術大会で、首下がりを呈した頚部ジストニアに対する運動療法を報告した。触圧覚から頸部周囲筋群の筋緊張の調節を、そして固有覚から頸部伸展活動の調節を促しながら、自律的姿勢反応の中、頸部・上部体幹の抗重力伸展活動を求める事で、機能的な姿勢・運動の獲得が得られた。以上の変化から首下がりを呈した頸部ジストニアに対し、感覚情報処理の再組織化を求めた運動療法は有効性であると報告した。今華回、同症例のその後2回の当院入退院から、首下がりの頚部ジストニアを呈した多系統萎縮症(以下MSA)の経時的変化を確認する機会を得た。当院入院中の運動療法導入期と当院入院前後の運動療法非導入期に分け、身体機能の変化の推移を検討し、運動療法が身体機能に及ぼす影響を考察したので報告する。<BR>【症例紹介】67歳 女性 頚部ジストニア MSA<BR>【現病歴・経過】平成13年背中のだるさ、首が下がる症状が出現。平成13年9月首下がりが増悪、動作障害出現。当院神経内科に平成15年4月14日~5月9日まで入院。その後、平成14年7月13日~9月5日、平成16年8月9日~9月3日に当院同科に入院した。<BR>【方法】各入院時の初日(運動療法非導入期)と最終日(運動療法導入期)に対し、Tusi変法スコア、Barthal indexスコア、統合パーキンソン病評価尺度(以下UPDRS)を用い、身体機能の変化の推移を検討した。運動療法導入期は40分間、週5回理学療法を実施した。<BR>【結果】(1)Tusiスコアの推移:9点→1点、9点→3点、9点→3点。運動療法導入期により、頚部偏倚に改善を認めた。<BR>(2)Barthal indexスコアの推移:50点→90点、50点→65点、20点→35点。入退院を重ねるに従い、食事動作、移乗・歩行能力に障害度が強まった。運動療法導入期により、移乗、坐位活動に改善を認めた。<BR>(3)UPDRSの推移:53点→29点、81点→45点、105点→84点。入退院を重ねるに従い、咀嚼・嚥下・発話能力、頸部以外の姿勢・運動、歩行能力に障害度が強まった。運動療法導入期により、頸部の姿勢、上肢機能に改善を認めた。<BR>【考察】首下がりの頸部ジストニアは、MSAに見られる代表的症状の一つと考えられている。MSAはパーキンソン病と比べ歩行障害、呼吸・嚥下障害、自律神経障害を発症後、数年で出現しやすい。本症例の経時的変化を見ると、亜急性期から首下がりを出現させ、病期が進むに従い咀嚼・嚥下・発話能力、歩行能力に障害度が強まった。今回、計3回の入院に運動療法を導入する事で、頸部偏倚の緩和、坐位・立位姿勢の保持能力に数値的変化を認めた。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205523420160
  • NII Article ID
    130006947873
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.25.0.84.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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