内腹斜筋の筋活動向上を目的にした体幹筋アプローチ法の検討

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抄録

【目的】脳血管障害をはじめ、臨床では体幹筋へのアプローチ法として膝立ちを用いている。先行研究では歩行や階段昇降において、体幹筋、とくに内腹斜筋の活動の重要性が指摘されている。そこで、内腹斜筋のアプローチとして膝立ちでの体幹回旋運動が有効であるかを表面筋電図にて検討した。<BR> 【方法】対象は健常成人14名(男性11名・女性3名、平均年齢19.50±2.21歳)とした。<BR>筋電計はNoraxon社製TeleMyo2400を用いた。導出筋は左腹直筋・左右内外腹斜筋・左右脊柱起立筋とし、表面電極位置はNgら、Vinkらの方法に従った。はじめに、Danielsの徒手筋力検査「Normal」の方法で体幹屈曲・伸展・回旋を行ない、最大筋力として筋活動量を測定した。次に、端座位・膝立ち・立位で安静時と課題動作時の筋活動量を測定した。課題動作は、被験者の肩甲帯から外乱に耐えうる最大の体幹回旋抵抗をかけ、開始肢位を保持し等尺性運動となるよう指示した。「安静肢位→右回旋→安静肢位→左回旋」を1回とし、これを2回行なった。解析は、これらの計測値を整流化して積分値(IEMG)を求め、最大筋力で安静時・課題動作時の筋活動量を単位時間で正規化し、%IEMGを算出した。重複測定分散分析にて各筋活動量に左右差がないことを確認した後、一元配置分散分析・多重比較検定を用いて、安静時・課題動作時・各肢位間での筋活動量の比較をした。有意水準は5%とした。<BR> 【結果】安静時と課題動作時の比較では、内腹斜筋において、膝立ちの同側回旋でp<0.01、対側回旋でp<0.05であった。脊柱起立筋は、膝立ちと立位の同側回旋でp<0.05、対側回旋でp<0.01であった。その他の筋には有意差がなかった。安静時の各肢位間の比較では、すべての筋で有意差がなかった。課題動作時の肢位間を比較すると、内腹斜筋は同側回旋の座位-膝立ち間がp<0.01であった。<BR> 【考察】内腹斜筋は、膝立ちの同側回旋で最も活動し、対側でも回旋活動が高まる。体幹回旋の主動作筋としての働きと、体幹回旋時に姿勢を中間位に保持しようとする固定筋としての働きによるものが考えられる。骨盤周囲、体幹が不安定なうえに、足関節での姿勢制御が制限される膝立ちでは、とくに内腹斜筋を活動させ骨盤周囲の安定性向上を図っていると考えられる。安静時の各肢位の比較では体幹筋の活動量に有意差が認められないことから、内腹斜筋の活動量を増大させるためには、座位・膝立ち・立位の各肢位をとるだけでなく、体幹回旋を行なうことが最も有効であり、とくに膝立ちでの動作が有効であると示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205523454464
  • NII論文ID
    130006947910
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.26.0.102.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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