血清アルブミン濃度と握力・体重の関係について

説明

【目的】<BR> 栄養評価で血液生化学の代表的指標である血清アルブミン濃度(ALB)と6分間歩行距離に正の相関があることを第26回関東甲信越ブロック理学療法士(PT)学会にて報告した。今回は,ALBと栄養評価で身体機能・構造の代表的指標である握力・体重の関係について着目し評価した。握力や体重は測定が簡便で,経時的に変動を評価するには優れている。しかし,握力は測定数値の妥当性が被検者の意思に偏るため測定値にばらつきが出やすく,また,体重は栄養状態が改善すると腹水や浮腫減少により,かえって体重減少するなど単独で栄養状態を評価するのに懸念もある。<BR> 【方法】<BR> 2005年5月~2006年5月に当院外科入院しPTが栄養サポートチーム(NST)の一員として関わった患者112例(男性70例,女性42例,年齢74.3±10.6,握力・体重測定できない患者は除く)を対象とした。NST活動で栄養管理・評価を行っている項目の中からALBと握力および体重の変数を抽出し多変量解析を行った。統計分析として,これらの変数の相関性を単回帰分析で行い,ALBと年齢を加えた各変数の関係を重回帰分析で行った。<BR> 【結果】<BR> 単回帰分析による各変数の相関性では,1)ALBと握力は正の相関(男P<0.01,女P<0.05),2)ALBと体重は無相関(男女)。重回帰分析では,3)ALBと(年齢,握力)は1)より高い相関が認められた(男女P<0.01)。 <BR> 【考察】<BR> ALBは生物的半減期が3週間と長く,体内に最も豊富に存在するタンパク質である。つまり,ALBはそれだけタンパク代謝動態およびエネルギー代謝動態に与える影響が大きく,骨格筋の機能的数値に鋭敏に反映したと考える。よって握力は栄養指標として単独でも有用と考える。一方,体重は食欲,摂食機能障害,嚥下障害,胸・腹水,浮腫,排尿・排便障害など複数要因で変動し,また,栄養状態が改善してALBが高くなると胸・腹水,浮腫改善により,かえって体重減少する対象も少なくなかったのでALBと体重は無相関になったと考える。しかし,体重は栄養状態やALBと関係して推移することは疑いのないところである。つまり,体重は栄養的指標として単独で評価するのではなく,理想体重値,他の検査値,理学的所見などと組合せて総合的に判断することの必要性を今回の調査でも示唆したと考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205523790080
  • NII論文ID
    130006948053
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.27.0.38.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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