病院病理部で取り扱う深在性真菌症
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- 木村 雅友
- 近畿大学 医学部 病理学教室
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説明
病院病理部で取り扱う深在性真菌症の検体はおもに生検,手術および剖検によって採取される。当院では過去3年間の生検・手術検体約36,000件中真菌症と診断されたのは29件である。その内訳は食道カンジダ症7例,副鼻腔真菌症9例,外耳道真菌症1例,ニューモシスチス肺炎1例,肺アスペルギローマ1例,肺クリプトコックス症1例,胸膜ムーコル症1例,爪真菌症8例である。ニューモシスチス肺炎,肺クリプトコックス症,胸膜ムーコル症以外の症例はすべて真菌症を疑って生検あるいは手術されていた。侵襲性肺アスペルギルス症の生検例は1例もなく,生検困難であることが伺われる。<BR>次に過去3年間の剖検例321例を見ると34例の深在性真菌症剖検例があり,その内訳はアスペルギルス症9例,カンジダ症20例,ムーコル症1例,アスペルギルス症+カンジダ症2例,アスペルギルス症+ムーコル症1例,アスペルギルス症+クリプトコックス症1例であった。剖検例の10.6%に深在性真菌症が認められており日本剖検輯報データによる4%前後という値より多いが,これは本院で血液疾患剖検例の割合が多いためと考えられる。剖検されたアスペルギルス症は全例とも侵襲性アスペルギルス症であり肺に病変を認めた。<BR>HE標本では真菌は通常淡染し観察しずらいのでグロコット染色なども加えて診断する。ところがムーコルのみはグロコット染色でも染色されにくいことがある。ムチカルミンやアルシアンブルー染色はクリプトコックス感染が疑われる場合その莢膜を同定するのに利用される。黒色真菌は細胞壁にメラニン色素を有するためHE標本で菌糸が褐色でさらにフォンタナマッソン染色をすると黒褐色に染色される。ところが黒色真菌以外の糸状菌でも黒褐色になることがあり所見の読みが難しい。今回は日常の病理診断で遭遇する様々な問題点についても触れてみたい。
収録刊行物
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- 日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
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日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 51 (0), 10-10, 2007
日本医真菌学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205523880576
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- NII論文ID
- 130006948152
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- ISSN
- 09164804
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可